四半世紀に及んだ協力関係はあっけなく解消へ向かった。新体制となったばかりの自民党には大きな痛手だ。国政の漂流は避けねばならない。

 公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民の高市早苗総裁と会談し、連立政権からの離脱を伝えた。

 派閥裏金事件の真相解明や企業・団体献金の規制強化を求めたが、十分な回答が得られず、政治不信払拭に向けた自民の努力が足りないと判断した。

 新執行部でも「政治とカネ」の問題にけじめを付けられない自民に見切りを付けたといえる。

 野党時代を含め26年続いた枠組みに幕を下ろすことになる。重い決断といえよう。

 今後は政策ごとに協力の是非を決める。選挙協力は白紙化する。石破茂首相の後継を選ぶ首相指名選挙では高市氏に投票しない。

 自公の少数与党から、自民単独内閣に転落すれば、政権運営の不安定化は避けられない。

 公明は日中関係の安定に貢献してきたとの評価もあり、外交への影響も懸念される。

 政権の枠組みが定まらないことで、臨時国会の召集は20日以降にずれ込む公算が大きい。政治空白は深刻の度を増すばかりだ。

 公明が強い懸念を示すのは、もっともだ。高市総裁選出を受け共同通信社が実施した世論調査では、裏金事件に関与した議員の要職起用に「反対」との意見が77・5%に上った。

 高市氏は裏金事件に関係した議員の要職での起用を否定せず、総裁選の自陣営を支えた旧安倍派の有力者である萩生田光一氏を幹事長代行に処遇した。

 萩生田氏は政治資金収支報告書への不記載があり、党の処分期間は明けたが、政策秘書は政治資金規正法違反罪で略式起訴された。

 高市氏はさらに新執行部で、総裁選の決選投票で支援を受けた麻生派と旧茂木派を厚遇した。派閥復権を印象付ける論功行賞の人事は、「解党的出直し」からは遠く、古い自民への逆戻りである。

 党四役のうち政調会長、選対委員長に高市氏と政治信条が近い、いわゆるタカ派議員を充てた人事も公明との溝を深めたのではないか。タカ派路線では、平和の党を掲げる公明との関係が冷え込むのは目に見えていたといえる。

 高市氏は会談後、「一方的に離脱を伝えられた」とし、「大変残念だ」と述べた。

 自民に求められるのは、誰が裏金を復活させたのかを明らかにすることだ。その説明を果たせなければ、国民の信頼を取り戻すことはできない。与党であり続けるのは難しいだろう。

 政治の混迷が深まり、政界再編が起きてもおかしくない。しかし急務の物価高対策はおろそかにされたままである。国民を置き去りにした政局は許されない。