「26年」といえば、夫婦なら酸いも甘いもかみ分けて銀婚式を終えたところ。生まれたばかりの赤ん坊が、いい大人になって社会を動かす立場になる歳月とも言える
▼そんな26年に及ぶ自民党と公明党の連立関係が、解消されることになった。もはや、それ以前の政治風景がどんなだったか思い出すのも苦労するほどだ
▼日本新党の細川護熙さんを首相に担ぐ非自民連立政権が誕生するなど政界再編が進んだ1990年代の終わりに、公明党は自民党と自由党との連立政権を組んだ。以来、下野も経験したが、選挙協力で支え合いながら一貫して自民党に添い続けてきた
▼雪国育ちの田中角栄元首相は、我慢の象徴として「下駄(げた)の雪」という表現を使った。踏まれてもばかにされても耐える政治家としての姿勢を語ったとされる。片や公明党は、安全保障や憲法問題でスタンスが異なっても与党にしがみついて離れない存在として、下駄の雪とやゆされた
▼安倍政権下の公明新聞には、そうした言われ方に反発するコラムが載った。存在感を増す公明党は「下駄の鼻緒」であると書いた。鼻緒が切れたら下駄は履けない。政権の一角を担う自負がにじんだ。結党の原点に立ち返るという今回の決断により、いよいよ下駄の部品でもなくなる
▼連立離脱が決まったきのう、その経緯を説明する公明党の斉藤鉄夫代表の会見では、背後のボードに書かれた文字に目が向いた。「やると言ったら、やり切る」。妙に腑(ふ)に落ちるキャッチフレーズだった。