「真実を知りたい」という遺族の願いに応える判決にはならなかった。無念さはいかばかりか。

 新発田市の中学2年の男子生徒がいじめを訴えて2017年に自殺した問題を巡り、学校側の対応が不十分だったなどとして両親が市に損害賠償を求めた訴訟の判決で、新潟地裁は請求を棄却した。

 判決などによると、男子生徒は複数の生徒から嫌なあだ名で呼ばれたり、からかわれたりしているといった悩みを担任らに相談した後、17年6月に自殺した。

 市教育委員会が設置した第三者委員会は18年10月、学校でのいじめを認定し、「心身の苦痛を感じていたことは明らか。自殺の原因はいじめにあると推定できる」との報告書をまとめた。

 原告側は、市の注意義務違反があるほか、加害生徒の氏名を開示しないことが違法だと主張し、20年1月に提訴した。

 判決は、いじめについて「個々の出来事は相対的に悪質性が高い行為とは必ずしも言えない」などと指摘。学校側が局面に応じて対応していたとして、市の注意義務違反を認めなかった。

 それならなぜ、かけがえのない命を守れなかったのか。

 第三者委は、当時の担任ら複数の教員が深刻ないじめと認識せず、組織的な情報共有がなかったことや、保護者にも伝えなかった問題などを挙げ、学校側に認識の甘さがあったと指摘している。

 裁判では、担任が「いじめかもしれないという認識はあった」と証言した。

 判決後、母親が「保護者と情報共有してくれるだけで息子の運命は変わっていたかもしれない」と訴えたのはもっともだ。

 学校や市教委は深く反省し、二度と悲劇を起こさないよう対策を徹底しなければならない。

 判決は、加害生徒の氏名を非公開としている市側の対応についても原告の主張を退けた。

 「リーダーや首謀となった加害生徒がいたとの事情は認められず、特定の加害生徒がいじめを行ったような場合の氏名の開示とは事案を異にする」との理由だ。

 市教委は市個人情報保護条例などを理由に開示に応じてこなかった。判決も加害生徒のプライバシー保護を重く見た。

 原告側が開示を求めたのは、男子生徒に何が起こったのか、真相を知りたい一心からだ。

 一方で、開示された氏名が流出して新たないじめ被害につながることも危惧される。

 識者からは「加害生徒のプライバシーと保護者の知る権利についての比較検討を裁判所はもう少し踏み込んでほしかった」との指摘が出ている。

 県内でもいじめによる自殺が後を絶たない。遺族の思いに寄り添った情報共有の在り方をしっかり考えていく必要がある。