地球上の生命はどうやって誕生したのか。宇宙にその謎を解く鍵があることを日本の探査機が教えてくれた。大きな成果が得られたことを喜びたい。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機はやぶさ2が2020年に持ち帰った小惑星りゅうぐうの砂などの試料から、生物を形作るタンパク質の材料となるアミノ酸が20種類以上検出された。

 これまで地球に落ちてきた隕石(いんせき)からの検出例はあり、宇宙にも存在していると推定されていたが、地球外から直接持ち帰った試料で確認できたのは初めてだ。

 生物に不可欠なアミノ酸の起源を知ることは、生命誕生の源や地球外生命の存在可能性に迫る手掛かりになる。

 地球の生命起源の材料を巡っては、地球上の化学反応で作られたとする説と、宇宙空間で生成され隕石などによって地球外から運ばれたとする説がある。

 今回の発見は地球外説を後押しするものだ。研究者は「小惑星の内部にアミノ酸が存在することが証明されたことで、宇宙からアミノ酸が到来した可能性が高まった」と指摘する。

 小惑星からの試料の持ち帰りは、10年に初代のはやぶさが相次ぐトラブルを乗り越えて世界で初めて成功した。ただ、アミノ酸は検出されなかった。

 飛行性能を向上させたはやぶさ2は、14年12月に打ち上げられ、19年に2回、りゅうぐうに着地し、石や砂など約5・4グラムの試料を採取。6年もの長い旅の末、20年12月に試料を収めたカプセルを地球に投下した。

 日本の宇宙探査に新たな歴史を刻んだ快挙といえ、多くの人々に勇気を与えた。

 回収されたカプセル内の試料は、JAXAをはじめ全国の研究機関が分担し、調査研究している。

 近く論文が公表される見通しで、どのような分析結果が示されるのか楽しみだ。

 アミノ酸には、鏡に映すと同じ形になるような「左手型」と「右手型」があり、地球上の生物はほとんどが左手型だ。

 その理由は解明されておらず、今回の試料に左手型が多いことが分かれば、アミノ酸は宇宙からもたらされた可能性が一層高まる。

 地球外生命が実際に存在するかどうかも将来の研究テーマとして注目される。

 小惑星にアミノ酸があるということは、他の惑星や衛星などに存在することも考えられる。地球上の生命と同じようなタンパク質を使った地球外生命がいる可能性があり、興味は尽きない。

 今後の宇宙開発で、日本は24年度に新型主力ロケット「H3」を使った火星衛星探査計画を進めている。ただ、ロケット開発が遅れ、計画遅延の懸念も出ている。

 先の日米首脳会談では、日本人宇宙飛行士による月面着陸などを進める考えで一致した。

 予算が限られる中、政府は宇宙開発の意義を国民に丁寧に示しながら、成果が着実に上がるようしっかりサポートしてもらいたい。