「記憶するチューリップ、譲りあうヒマワリ」
 「記憶するチューリップ、譲りあうヒマワリ」

 樹齢を重ねた木や、観葉植物の新芽を見ると、植物も生きているのだと改めて気づかされる。米国の環境記者である著者も、植物に魅了された一人だ。シダの鮮やかな緑色の葉に「心を奪われ」、タトゥーを入れるほどのめり込んだ。そして仕事を辞め、植物とは何なのかを探しに行く旅に出た。

 ベルリンの植物園から、チリの熱帯雨林、スコットランドの農家、米自治領プエルトリコの洞窟まで。各地で多種多様な植物と触れ合い、研究者から最新の話を聞いた。最大の問いは「植物に知性はあるのか」という点だ。

 チューリップには「冬の記憶」が必要で、春に花を咲かせるには冬の寒さが欠かせないことを知っている。温暖な地域で球根を植える前に冷蔵...

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