文字起こしアプリを使い、会話を聞き取りやすくする「聞き取り困難症」の当事者ら=2025年2月、奈良市
 文字起こしアプリを使い、会話を聞き取りやすくする「聞き取り困難症」の当事者ら=2025年2月、奈良市
 近畿LiD/APD当事者会の渡辺歓忠代表
 聞き取り困難症の聞こえ方の一例(イメージ)
 取材に応じる兵庫県の高校2年中村知子さん(仮名)
 「聞き取り困難症」の補助具のイヤホンとマイク。マイクは話し手の首にかけてもらう=2025年5月、堺市
 「聞き取り困難症」の補助具のイヤホン(左)とマイク
 「聞き取り困難症」の当事者らが参加した、補助具貸し出しについての説明会=2025年5月、堺市

 物理の先生の声だけが聞き取れない―

 兵庫県内に住む中村知子さん(17)=仮名=は高校に入学した直後の2024年4月、自身の聞こえ方の異変に気付いた。両親や友人、他の先生の声は聞き取れる。しかし、物理を担当する50~60代の男性の先生だけ声が聞き取れなかった。

 中村さんは話す。

 「先生の声だけ、聞いたそばから消えていくような感じだった」

 それは「音は聞こえるのに、言葉としては聞き取れない」という症状。海外の研究によると、同様の傾向がある人は人口の1%に上る可能性もあるが、日本では2024年3月に「診断の手引き」がようやく作られたばかりのものだった。(共同通信=西村曜)

 ▽聞こえているけど、聞き...

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