「越後三大花火」と呼ばれる夏の花火大会が3年ぶりに開かれる。新型ウイルスの感染対策を万全にして楽しみたい。感染収束後を見据え新潟の豊かな花火文化を内外に売り出す契機ともしたい。

 越後三大花火は、長岡市の長岡まつり、小千谷市の片貝まつり、柏崎市のぎおん柏崎まつりの花火大会を指す。

 7月下旬から9月上旬に開催され、打ち上げ会場の違いから「川の長岡」「山の片貝」「海の柏崎」と称される。

 それぞれ特徴があるが、共通するのは大規模な花火が次から次へと打ち上げられることだ。

 県内の花火師が持つ製造・打ち上げ技術の高さ、花火文化の豊かさを象徴している。

 3大会とも感染拡大で2年続けて中止された。今年は感染が落ち着いていることから、それぞれの主催者が再開を決めた。

 ウイルス禍前はテレビで生中継されることもあり、広く知られるようになっていた。

 観覧ツアーが組まれ、長岡花火には2日間で100万人が訪れるなど、経済効果は大きかった。

 打ち上げ中止は地域経済に深刻な影響を与えただけに、地元からは今回の開催を歓迎する声が多く聞かれる。

 主催者側も意気込んでおり、長岡市の磯田達伸市長は「2年連続中止で市民や県民、全国のファンに大きな喪失感があった。今年は何としても実施したい」と語る。

 柏崎市の桜井雅浩市長は「3年分の思いを込めて打ち上げる。柏崎の元気を全国に発信したい」と話している。

 とはいえ、感染は収束していない。開催で感染拡大を招くようなことになればイメージ悪化は必至だ。今後にも影響しかねない。

 主催者側は観覧席の削減や有料エリアの拡大、飲食の自粛要請などの対策を行う計画だ。

 会場を訪れる一人一人も密を避けるようにして、大声は出さない、アルコールは控えるといった対策を忘れないようにしたい。

 地域住民の心を一つにする力が花火にはある。花火に合わせて帰省する、知人を招く、同級生で集まるといった人も少なくない。ウイルス禍で希薄になった絆を花火で深めるのもいいことだ。

 政府は約2年ぶりに、訪日外国人観光客の受け入れを制限付きながら解禁した。

 外国人観光客の受け入れを増やすことは、本県にとって大きな課題でもある。新潟の花火は外国人も引き付けるはずだ。花火大会の復活を機に、海外に向けたPRや情報発信にも一層力を入れたい。

 三大花火はそれぞれ長い歴史の上に成り立っている。片貝は浅原神社への奉納花火であり、柏崎は八坂神社の祇園祭に起源がある。

 三大花火の筆頭格で日本三大花火の一つにも数えられる長岡花火は戦後、長岡空襲の犠牲者を慰霊するために復活した歴史がある。

 平和だからこそ、花火が楽しめる。戦火がやまないウクライナにも思いを寄せ、上がる花火に世界の平和を願いたい。