深まる米中対立やロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮の核・ミサイル開発など、重大な懸念が周辺諸国で広がっている。日本は各国と対話を重ね、地域の緊張緩和を図る役割を果たしたい。

 アジア太平洋の主要国の首脳や国防相らが地域情勢を議論するアジア安全保障会議がシンガポールで開かれた。日本からは岸田文雄首相と岸信夫防衛相が参加した。

 日米韓の防衛相会談では、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を強く非難するなどの共同声明を発表した。ミサイル対処のため3カ国共同訓練の再開方針で一致したほか、台湾海峡の平和と安定の重要性についても初めて言及した。

 日米韓防衛相会談は韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権発足後初めてだ。声明は、尹政権が日米との連携を重視する姿勢を反映したものといえる。

 日本にとっては、隣国の韓国や中国などとどう向き合い、課題解決を目指すかが問われた。

 日韓関係はこれまで、元徴用工や元慰安婦を巡る問題などで「戦後最悪」と言われてきた。

 安全保障面でも、韓国軍による自衛隊機への火器管制レーダー照射や、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一時破棄などで結束が乱れていた。

 米国が「唯一の競争相手」と位置付ける中国やウクライナ対応に追われている中で、北朝鮮に対する防衛を強化するためには日韓の緊密な連携が不可欠だ。

 韓国側は会談後、日韓安保協力の正常化に意欲を表明した。外交面でも日本との対話に積極姿勢を示し、変化の兆しを見せている。

 これを契機に信頼関係を醸成し、日韓首脳会談の早期実現につなげたい。日本政府も関係改善へ前向きに応じていくべきだ。

 岸防衛相は、中国の魏鳳和国務委員兼国防相とも会談し、戦略爆撃機で5月に日本周辺を共同飛行するなどした中国とロシアの軍事行動に深い懸念を伝えた。

 防衛当局間の対話や交流を促進していくことでは一致した。不測の衝突を引き起こさないためにも当然の対応だ。

 岸田首相は安保会議で講演し、「ウクライナ侵攻は対岸の火事ではない」として、中国を念頭にアジアの危機に積極的に対応すると強調、防衛力を抜本的に強化すると表明した。

 インド太平洋の海洋秩序維持に向けた計画の策定や支援を実施することも強調した。

 予算の大幅な増額が伴う防衛力強化については国内でまだ議論が深まっていない。外交の場での前のめりな発言には疑問が残る。

 首相は講演の質疑で「対話によって信頼関係をつくるよう努力したい」と答え、日中の交流促進に意欲を示した。

 岸田政権が最優先すべきは独自の平和外交を展開し、地域の安定と繁栄を追求していくことだ。