中学生のスポーツ環境が大きく変わろうとしている。課題を一つ一つ解決して、生徒たちが生き生きと活動できるようにしたい。
スポーツ庁の有識者会議が、2025年度末を目標に、公立中学校の運動部活動を休日は地域のスポーツクラブなどに委ねるべきだとする提言をまとめ、同庁に提出した。
各自治体に対し、推進計画をつくることを求めている。まずは、しっかりと問題点を洗い出す作業が欠かせない。
提言の背景には、少子化により1校だけでは部活動の維持が困難になっていることがある。指導する教員の長時間労働を解消することも目的だ。
休日の地域移行がおおむね完了すれば、平日での実現を目指す。
近年、少子化で複数校による合同チームの編成が目立っている。日本中学校体育連盟の統計では、11年から21年までの間に軟式野球が120から693、サッカーが104から330に増えている。
文部科学省によると、16年度に教員が土日の部活動に従事した時間は1日平均2時間9分。06年度の1時間6分から倍増した。
過酷な労働実態は教職人気の低下にもつながっている。土日の部活動指導を減らすことで、教員の働き方改革を急がねばならない。
課題は山積している。
地方では、スポーツクラブなどの受け皿がなかったり、指導者がいなかったりする所もある。
スポーツ庁は指導者への対価支払いの面で自治体を財政支援し人材不足を回避していく考えだ。
移行後、民間指導者に子どもを預けることに不安を抱く保護者もいるかもしれない。部活動は学校教育の一環だからだ。競技の技術だけでなく、いじめなどがあった場合に教育的な指導もできる人材が求められる。
勝つことにこだわりすぎた指導で、子どもが体を壊してはならない。生徒の将来を見据えた指導を共有する研修なども必要だろう。
提言は大会のあり方についても言及し、1位を決めるトーナメント方式は、勝利至上主義による行き過ぎた指導が生じる一因として見直すよう訴えている。
地域移行で家計負担が大きくなることも想定される。
同庁によると、民間団体の運営では、指導や保険の費用で従来より1人当たり年間約1万7千円高くなると試算されている。
この点でも同庁は、補助のあり方を検討していくとしている。困窮世帯の生徒も等しく参加できるようサポートしていくべきだ。
移行を先取りしている地域では、住民の協賛金を募っている所もある。知恵を出し合い最善の環境をつくってほしい。
課題は地域によりさまざまだ。地域が一丸となり取り組むことが求められる。希望する生徒全員が運動の機会をきちんと確保できるよう進めてもらいたい。
文化系の部活動についても、文化庁の有識者会議が7月に提言をまとめる。
こちらも受け皿や指導方法などしっかり吟味することが大事だ。
