有権者に広く影響する大幅な改定となった。混乱を招かぬように十分な周知が欠かせない。
本県は選挙区が一つ減り、有権者の声が国政に届きにくくなることが懸念される。国と地方の民意をつなぐ議員の責務はいっそう重くなると認識したい。
衆院選挙区画定審議会は16日、小選挙区定数を10増10減し「1票の格差」を是正する新たな区割り案を岸田文雄首相に勧告した。
25都道府県、計140選挙区が対象となる。1994年の小選挙区制導入後4回目の勧告で、過去最大規模の改定だ。
本県は現行の6選挙区が一つ減り、5選挙区となる。新しい選挙区は、秋の臨時国会を経て適用される見通しだ。
歓迎したいのは、3選挙区に分かれていた長岡市や新潟市北区が一つの選挙区になったことだ。
本県では市町村合併が進んだ結果、一つの市や区に複数の選挙区が入り組み、地域の一体性が損なわれると危ぶむ声が上がっていた。選挙事務や開票作業にかかる手間も大きかった。
選挙区の一体感にも課題があった。従来の新潟2区は佐渡市と、海を挟んだ燕市、柏崎市などにまたがって南北に長く、生活圏や経済圏が一致していない。
改定で佐渡市は航路で結ばれた新潟市中央区、燕市は同じ県央地域の三条市、柏崎市は長岡市などとそれぞれ同じ選挙区になる。
選挙区の構成が様変わりし、戸惑う有権者もいるだろう。行政は周知を重ね、正しく理解できるように取り組んでもらいたい。
勧告では、人口最多の福岡2区と最少の鳥取2区の1票の格差が、1・999倍となった。格差が2倍以上の選挙区は辛うじて解消された格好だ。
憲法は投票価値の平等を要求し、司法もそれを重視している。格差は放置できない問題だ。
ただ人口比を反映しやすい議席配分方式の「アダムズ方式」を採用したことで、人口が少ない地方の議席が大きく減った。
地方の声が届きにくくなると首長らから懸念する声が上がった。危機感は十分理解できる。
人口減が止まらず、地方から都市部への人口流出が続けば、格差はまた広がる可能性がある。
都市部の議員だけが増えるのでは、高齢化や過疎化といった地方にとってより深刻な課題の解決が遠のかないか心配される。
将来を見据え、人口のみを基準にする現行制度を見直し、地方の声も反映できるような選挙制度について議論を始めるべきだろう。
地方の議席が減る中で、地域をよく知る代表を国会へ送ることはこれまで以上に重要になる。国会議員の力量がさらに問われる。
地域の未来を託せる政治家は誰か。私たち有権者はしっかりと目を凝らさなくてはならない。
