原発事故を引き起こした巨大津波の発生を国は本当に予見できなかったのか。その判断を示さず、なぜ「責任なし」と言えるのか。

 東京電力福島第1原発事故の避難者らが国に損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁は17日、国の賠償責任を認めない判決を出した。

 最高裁として初めての判断だ。裁判官4人のうち3人の多数意見で、1人が反対した。

 炉心溶融という未曽有の原発事故から11年余り、東電を規制する立場だった国に法的責任はないとする事実上の決着がついた。

 最高裁判決は約30件ある同種訴訟の中で福島、群馬、千葉、愛媛で提訴された4訴訟の統一判断となる。8月に控訴審が始まる新潟訴訟を含め、後続の関連訴訟に影響しそうだ。

 訴訟の争点は、政府機関が公表した地震予測「長期評価」に基づいて、国は巨大津波による事故を予見できたか、東電に対策を講じさせていれば事故を回避できたかどうかだった。

 ところが判決は、長期評価の信頼性に触れず、津波襲来を予見できたかという肝心の部分について判断を示さなかった。

 長期評価を根拠として東電が試算した津波と、実際に襲来した津波は、規模も方角も異なり、「仮に規制権限を行使し、東電に必要な措置を命じていても、大量の浸水を防ぐことができなかった可能性が高い」として訴えを退けた。

 これでは争点の判断を回避したに等しく、正面から向き合っているとは言えない。結論に至る過程が分からず、原告らが「ふざけるな」と怒るのは当然だ。全ての避難者が納得できるよう説明を尽くしてもらいたかった。

 一方、東電の賠償責任は既に確定し、4訴訟で総額14億円余りを単独で支払うことになった。

 国が定めた賠償金の指針を上回り、住み慣れた故郷の喪失、自主避難者の慰謝料増額なども認められている。実態に合わせ、国には指針を見直す責任がある。

 福島県によると、県内外で3万人が避難を続け、原発周辺には7市町村にまたがり原則立ち入り禁止の帰還困難区域が残る。

 汚染地域の現状回復や、居住が認められた地域でも生活基盤の整備などが国の責務だ。

 判決で菅野博之裁判長は、原発事故の場合は「電力会社以上に国が結果を引き受け、過失の有無に関係なく被害者救済に最大の責任を担うべきだ」との補足意見を付けた。もっともな指摘だろう。

 県内でも東電柏崎刈羽原発の安全性を巡る県独自の「三つ検証」作業が進んでいる。花角英世知事は再稼働の是非を判断する際の材料とする姿勢を示している。

 県と事業者に安全対策を委ねるばかりでなく、国は規制当局として、住民の安心安全を守る役割があるのだと自覚してもらいたい。