円安が加速して物価高に拍車がかかり、消費者心理がさらに悪化する恐れがある。日銀は景気動向に細心の注意を払い、今後の金融政策を見誤ってはならない。

 日銀が17日の金融政策決定会合で、金利を極めて低い水準に抑える大規模な金融緩和策を維持することを決めた。

 円安やウクライナ危機などを背景にした物価高が進む中、引き続き景気の下支えを優先させた。

 国内景気の現状については「基調としては持ち直している」との判断を据え置いた。

 今回の会合に向けては、0・25%程度までに抑え込んでいる長期金利の上限を引き上げるとの観測があったが、変更しなかった。

 黒田東彦総裁はこれまで、円安の影響について輸出企業が稼いだ外貨が円建てで膨らむことなどから「全体としてはプラス」との考えを繰り返してきた。

 だが、13日の国会では「急速な円安は経済にマイナス」と答弁し変化を感じさせた。これが金融政策修正の観測につながっていた。

 しかし会合後の会見では、ウイルス禍からの回復途上にある中で利上げすると「景気の下押し圧力になる。経済がさらに悪くなる」と述べ、現行の緩和策を「粘り強く続ける」と改めて表明した。

 この3カ月で円安は約20円も進んだ。原材料や食品など輸入価格の上昇は、中小企業の経営や家計を圧迫している。

 それでもなお日銀が緩和策を続けるのは、ウイルス禍の打撃から景気回復が進み、賃金も上昇している米欧に対し、日本は個人消費や設備投資が振るわず立ち直りが遅いと判断しているからだ。

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は先日、消費者物価指数が前年同期比8・6%上昇という記録的インフレを抑止するため、政策金利を通常の3倍の0・75%引き上げ、1・5~1・75%とすることを決めた。

 米国との金利差の拡大は、日本の円を一層売りやすくし、円安を進める可能性が高い。1ドル=140円台も視野に入ってきたとの見方もある。

 日銀は外国為替市場の動向が経済や物価に与える影響を「十分注視する必要がある」とし、投機的な円売りの動きをけん制した。急激な円安に乗じた投機的な動きに警戒を強めるのは当然だ。

 注視すべきは対ドルだけではない。欧州中央銀行(ECB)も主要政策金利を引き上げることを決めた。対ユーロでも円売りが加速し、円は主要通貨に対して「一人負け」の様相を呈している。

 エコノミストの一人は消費者物価上昇率が一時的にも3%まで上昇すれば社会の怒りが政府・日銀に向かう恐れがあると指摘する。

 日銀には景気や賃金の動向を踏まえ、金融政策を見極めることが求められる。