対話を重ね、信頼関係を着実に築いてもらいたい。隣国との協調は地域の安定に不可欠だ。
日中関係の悪化に加え、米政権の対応により国際情勢が不確実性を増す中で、日韓両国の連携はこれまで以上に重要だ。
高市早苗首相は韓国の李(イ)在明(ジェミョン)大統領と奈良市で会談した。李氏は昨年8月にも来日している。高市首相は昨年10月に国際会議に合わせ韓国・慶州を訪問した。首脳同士が相互に往来するシャトル外交が継続している。
今回の会談で、両首脳は経済安全保障分野での協力に向けて関係部局間で議論を進めることで一致した。重要物資のサプライチェーン(供給網)強化についても意見を交わしたという。
高市首相の念頭には、台湾有事が存立危機事態になり得るとした国会答弁に端を発した日中関係の悪化があるだろう。中国は対日輸出管理の強化を発表している。
李氏は今月、国賓として中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。中国側は李氏を厚遇し、対日共闘を訴えた。
その際に李氏が中立の立場を維持したことに安堵(あんど)する。
米政権は昨年発表した安全保障政策「国家安全保障戦略(NSS)」に、日韓両国を名指しして「防衛費の増額を促す必要がある」と明記した。今後、日韓への要求が強まる可能性がある。
日韓の連携した対応が求められる。加えて米国に対し、日米韓3カ国の安保協力の重要性を共に訴えていかねばならない。
両首脳は北朝鮮の完全な非核化に向けた連携について合意した。首相は日本人拉致問題の解決のため韓国の理解と協力も求めた。
戦時中の水没事故で朝鮮人を含む多数が犠牲になった山口県宇部市の「長生炭鉱」に関し協力の進展を両首脳が歓迎した。回収された遺骨のDNA型鑑定などを着実に進めてもらいたい。
懸念されるのは、歴史認識や竹島を巡る問題だ。
高市首相は昨年の自民党総裁選で2月22日の「竹島の日」式典に通例となっている内閣府政務官ではなく閣僚を派遣するべきだと主張していた。
韓国側はタカ派色の強い高市首相が、竹島の日にどう対応をするのか注目している。
保守層にアピールするために、閣僚派遣に踏み切れば、改善した日韓関係に水を差しかねない。首相には慎重な判断が求められる。
