値上げの波がとまらず、収入が増えない家計を直撃している。どんな経済対策を講じ、物価高騰を抑えようとしているのかを見定めたい。
4月の全国消費者物価指数は前年同月比で2・1%上昇した。消費税増税の影響を除けば約13年半ぶりの高い上昇率となった。
政府や日銀がデフレ脱却の目標に掲げた2%は突破した。だが、賃金が上がらない中での物価高は家計の重荷にほかならない。
これでは政府が目指す「経済の好循環」とはいえない。モノの値段が上がれば企業収益が増え、賃上げで消費が拡大し、物価が上昇する構図を描けていないからだ。
物価高の背景には、ウクライナ危機など緊迫化する世界情勢がある。仕入価格が上昇し、企業業績が悪化する「悪いインフレ」からの脱却は容易ではない。
共同通信社の世論調査によると、参院選で最も重視して投票するのは「物価高対策・経済政策」が最多で42%を占めた。
物価高に対する岸田文雄首相の対応は「十分だとは思わない」と答えた人が8割に達した。
与党の支持率は高いが、物価高が急所になりかねない。政府の経済対策と、「岸田インフレ」と非難する野党の政策を比較、精査することが欠かせない。
与党は物価高の中心に「エネルギー、食料品の価格高騰」を挙げ、そこに燃油価格の激変緩和措置継続などの政策を集中させる。
物価高騰の原因はロシアの侵攻で、日本の物価上昇は米国などと比べ4分の1程度だと訴える。
物価高騰の影響を補助金などで軽減させているが、そうした手法には限度があるだろう。
賃金を上げ、消費を増やし、産業構造を変えるような抜本的な経済政策が必要ではないか。
野党の一部は、欧米との金利差に起因する急激な円安も物価高に拍車をかけているとし、現政権も踏襲する安倍晋三元首相の経済政策・アベノミクスによる「異次元の金融緩和」の見直しを求める。
しかし、ゼロ金利政策の変更は住宅ローンや企業金利が上がり、景気への影響が懸念される。
金融緩和は世界の金融情勢をにらんで時期を見定め、家計や企業への打撃がないよう複合的に検討されるべきだ。
消費を喚起する手法は与野党の違いがはっきりした。消費税減税や廃止を打ち出す野党に対し、与党は「消費税は社会保障の安定的な財源」として否定的だ。
与党には賃上げを目指すだけでなく、具体的な消費刺激策を示してほしい。野党も減税の財源をきちんと説明してもらいたい。
経済の好循環を実現するには将来を見据えた政策が不可欠だ。参院選ではそこにも目を向けたい。
