第4回新潟国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門に選出された「トリツカレ男」は、完成まで7年間の歳月を要した力作だ。髙橋渉監督(51)は「登場するキャラクターに幸せになってもらいたい。そういう映画をつくりたかった」と語る。作品への思いを聞いた。
──じっくりとつくり上げた作品ですね。
企画案をいただいた際、制作を引き受けるか悩みました。それまでつくってきた「クレヨンしんちゃん」はお気楽な雰囲気なのですが、「トリツカレ男」は原作がすごくきれいで美しい話だったので、「自分にできるか」と自問しました。周りの後押しもあり、制作を引き受け、20人ほどのコアメンバーでこつこつとつくり上げました。
──ミュージカルアニメーションにしたのはどうしてですか。
原作を読み込んでいくうちに「人の思いがとても大事なお話だな」と思いました。それをうまくエンターテインメントにのせるにはどうしたらいいかと考えている中、プロデューサーからミュージカルの提案があり、それなら、私が得意な楽しい場面や笑いのあるシーンを取り込めると思いました。歌で感情表現を補足する効果もありました。
──登場するキャラクターなどが特徴的です。デザインで工夫をされたことは何ですか。
原作がメルヘンチックな雰囲気なので、今の主流の絵ではなく、クラシカルなものがフィットすると思い、キャラクターをデザインしました。影の使い方も工夫しています。幾何学的なスポットライティングのような影を全面的に取り入れました。これはカクカクとデザインされたキャラクターには、デザインされた光でないと、統一感が出ません。リアルな影だと、マッチしないんですよ。
──他にも工夫された部分はありますか。
全体的にスローテンポにしました。心の動きがとても重要な作品なので、せりふやしぐさがより伝わるようにするには効果的でした。
──声優は、主人公のジュゼッペ役がアイドルグループ「Aぇ!group」の佐野晶哉さん、ペチカ役が俳優の上白石萌歌さんです。作品にぴったりですね。
「トリツカレ男」の髙橋渉監督
このお二人以外に考えられないと感じています。ジュゼッペは「ふわふわ」と地面から浮いて歩いている感じな人で、ペチカは目の奥にエネルギッシュな部分が感じられる人。当初は、雰囲気に合う人が見つかりませんでした。そんなとき、佐野さんを知りました。勝手なイメージですが、アイドルなら「ふわふわ」した雰囲気に合うと思いました。上白石さんはスタッフの紹介で、ボイスを聞いてみるとぴったりでした。
──最後のクライマックスシーンはどのような気持ちで制作しましたか。
一言でいうと「ウイニングラン」です。ペチカが、喜びの中で走って行く。ちょっとおかしく見えるぐらいを意図しました。歌が美しかったので、そんなにおちゃらけた感じにはできませんでしたが…。
──長編コンペティション部門に選ばれました。
選出されるとは思わなかったので、とても驚いています。見えないものが一番大事なことだと作品に描きました。多くの皆さんに見ていただきたいです。
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〈次回の上映〉
◆【23日16:30】(長編コンペ)「トリツカレ男」上映(ウインド)
日本/2025年/98分/監督:髙橋渉
「トリツカレ男」© 2025 The Obsessed Production Partners
何かに夢中になると、ほかのことは一切見えなくなってしまう“トリツカレ男”のジュゼッペ。一目惚れしたペチカは心に悲しみを抱えていた。ハートフルでちょっぴり切ない、ラブストーリー・ミュージカル!













