新潟名物笹だんごをほおばるしぐさをするホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアスさん
新潟名物笹だんごをほおばるしぐさをするホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアスさん

 少年時代に魅せられた日本のアニメーションをきっかけに、スペイン語圏の国々と日本の文化の橋渡し役となって、すでに20年近いキャリアをもつホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアスさん。NIAFF来訪は今回で3回目。「私の心は新潟にある」とまで語るご本人に、審査員としての意気込みと、アニメーション文化への思い入れを聞いた。(アニメライター・鈴木長月)

──映画祭で新潟を訪れるのは今回で3回目とのこと。スペイン出身のハビエルさんにとって、やはり日本のアニメーションというのは特別なものですか?

 80年代生まれの私と同世代のスペイン人なら、ほとんどの人がなにかしらのアニメには触れていますからね。とくに私の場合は、11歳のときに見た「AKIRA」の衝撃とあまりの素晴らしさに言葉を失うぐらいに感動して。以来、日本の文化にすっかり恋をしてしまったんです。それが日本での仕事にもつながって、私自身、4年前からは東京で暮らしています。過去3回の新潟では、大友克洋、押井守、りんたろうといった敬愛するクリエイターにも直接会えて、それも本当にラッキーで光栄なことだったなと感じています。

──所属されている「インスティトゥト・セルバンテス東京」というのは、あまり聞きなじみがないのですが、主にどういった活動をされている組織なんでしょう?

 日本語だと「セルバンテス文化センター」と訳されることもありますが、簡単に言うと、スペインの文化庁みたいな役割を担っている組織です。そこでの私の主な仕事は、映画や音楽、フラメンコ、料理といった多岐にわたるスペインの文化を日本の人々に伝えていくこと。東京の麹町にすごく大きなビルがあって、そこではスペインやスペイン語圏のさまざまな国の文化も学べるほか、スペイン語の勉強もできるようになっています。

──もちろんそこには大好きなアニメも含まれている、と。

 私たちが「ドキドキ・アニメーションÑ(エニェ)」という小規模の映画祭を自分たちで主催するようになったのも、実はこの新潟を訪れたことがきっかけですからね。「ユニコーン・ウォーズ」や「ボサノヴァ 撃たれたピアニスト」は、新潟で長編コンペに選んでいただいた作品(それぞれ第1回/第3回)ですし、パブロ・ベルヘル監督と一緒に2023年の東京国際映画祭に持ち込んだ「ロボット・ドリームズ」などは、その後、日本で公開されたスペイン映画としては歴代ナンバーワンとなる大ヒットを記録したりもしています。

ホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアスさん

──御年85歳の巨匠ビクトル・エリセや、「オール・アバウト・マイ・マザー」などでオスカー受賞のペドロ・アルモドバルをも超えて、ですか?

 まぁ、作品自体がニューヨークにいるロボットと犬のお話なので、それがスペイン映画だってことを知らない人も多いんですけどね(笑)。でも、昨年は「ドキドキ〜」にも1000人以上の方々が足を運んでくださいましたし、先ごろ日本でも公開された「オリビアと雲」なども同じスペイン語圏であるドミニカ共和国の作品。若い世代を中心に日本の方々の興味や関心が年々増しているというのは、大阪・関西万博でも肌で感じましたしね。私自身も近い将来、すごい実りがまたあるんじゃないかと期待しているところです。

──そのための仕掛けを考えるのが、ハビエルさんというわけですね。

 ヨーロッパ人でありながら、ラテンアメリカの国々とも文化的な行き来ができるのが私たちの強みですから、そういった立ち位置や役割を生かして、それぞれの国のアニメーションをよりいっそう広めていきたいと思っています。自分たちが慣れ親しんできたアニメとはあきらかに違う、というのが日本の若い人にとっては逆に新鮮に映るんだとも思いますので、そのあたりはこれからも大事にしていきたいですけどね。

──では最後に、愛する新潟の街にひと言メッセージを。

 映画祭の期間中はどうしても作品を見ることに集中してしまうので、あまり観光には行けていないのですが、おいしい寿司と素晴らしい酒がある、というだけでも新潟は大好きな街。趣味のランニングで街中を走るのも楽しいですしね。そんな新潟の街が、これからますます国際的な結びつきを強くして、「日本でいちばんクリエーティブな街だ」と、世界に紹介されるようになってくれたら、私にとってもそれがなによりの喜びです。

◎ホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアス 欧州文化機関ネットワーク(EUNIC Japan)の会長。セルバンテス文化センターの文化事業マネジャー。GAC業界(ゲーム・アニメーション・コミック)において20年のキャリアを持ち、アジア初かつ唯一のスペイン語圏アニメーション・フェスティバル「Doki Doki」の共同創設者。

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◆【22日10:30】(マスタークラス) 「世界のアニメーション:日本、ヨーロッパとラテンアメリカの文化的交流」(日報ホール 入場無料)

 ホセ・ハビエル・フェルナンデス・ディアスさんが講師を務め、近年のアニメのグローバルな流行とラテンアメリカの漫画家たち、欧州発アニメーションのヒット、Z世代による受容などのつながりを紹介する。

◆【24日12:30】「マリポーサス・ネグラス—黒い蝶—」上映(市民プラザ)
スペイン=パナマ/2024年/83分/監督:ダビッド・バウテ

 ケニア、インド、パナマ。干ばつや海面上昇により「気候難民」となった3人の女性。異郷の障壁に抗いながら、未来を求めて旅する彼女たちの過酷な現実を、実話に基づきアニメーションでつづる。

◆【24日14:15】「ノルベルト」上映(市民プラザ)
スペイン2024年/75分/監督:ホセ・コラル・リョレンテ

 不器用なスパイのノルベルトは、母国グレイランドが色彩豊かなカラーランドを侵略しようとしていると知る。世界の“色”を守るため、風変わりな仲間と陰謀に立ち向かう、冒険ファンタジー・コメディー。

<著者プロフィル>
◎鈴木長月(すずき・ちょうげつ)1979年生まれ。大阪府出身。東京都在住。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。プロ野球からサブカルチャーまで守備範囲は広く、アニメ専門誌『アニメージュ』(徳間書店)などにも寄稿する。妻が胎内市(旧中条町)出身で、新潟は自称「第2の故郷」。