誰もが安心して暮らすためには、充実した医療環境や持続可能な社会保障制度が不可欠だ。

 各党は人口減少社会の現状と先行きを見据えて議論を深めてもらいたい。

 まず急ぎたいのは、新型コロナウイルスの感染拡大で脆弱(ぜいじゃく)さが浮かび上がった医療提供体制を構築し直すことだ。

 重症化しやすいデルタ株が流行した際には保健所の業務や病床が逼迫(ひっぱく)し、多くの患者が自宅療養を余儀なくされた。

 論戦を通じてこれまでの新型ウイルス対応を巡る課題について掘り下げ、解決に向けた対応策を示さなくてはならない。

 政府は参院選の公示直前に、感染症対策を一元的に担う「内閣感染症危機管理庁」の創設など、司令塔機能や医療提供体制の強化策を決定した。

 病床や人材といった医療資源を迅速に確保するため、国や都道府県の権限を強化する内容で、感染症法を改正して対応する。

 与党はこれらの対策を念頭に、危機に備えて体制を抜本的に強化すると公約に掲げている。

 ウイルス対応を巡って散見された行政の縦割りを排除することができるのか、一般の療養者もいる医療現場への負担はないのか、もっと説明が必要だ。

 高齢化による医療ニーズの変化や人口減の影響で地域医療は厳しい環境に置かれている。

 本県でも県立13病院の役割や在り方の見直しについての議論が進められているさなかだ。

 野党の公約には、公立病院の統廃合や病床削減につながる「地域医療構想」を抜本的に見直すなど、地域医療を守る訴えが目立つ。

 だが医師や看護師を欠いては現場を守ることはできない。地域による偏在が指摘される医療人材の確保策も示してほしい。

 社会保障制度の支え手が人口減少社会の中で減っていることも見過ごせない重要な論点だ。

 高齢者の生活を支える公的年金は本年度、ウイルス禍で現役世代の賃金が下がったことから前年度比0・4%引き下げられた。

 65歳以上の高齢者は2040年に約3900万人と推計され、ほぼピークになる。年金などの社会保障費がさらにかさむ。

 一方で社会保険料を負担する64歳以下の現役世代は約6千万人となる見通しで、15年に比べて約1700万人も減り、財政が揺らぐ事態になりかねない。

 世代間の公平感をどう保つか、制度設計が問われよう。

 政府の全世代型社会保障構築本部は5月に、厚生年金の対象拡大などを柱とする中間整理をまとめたが、財源論が見えない。

 健康で長生きできる社会の実現にもっと議論が必要だ。