国際秩序が大きく揺らぐ中、外交も重要な争点だ。各党は地域の安定につながる具体的な政策を競ってもらいたい。

 岸田文雄首相は参院選期間中に先進7カ国首脳会議(G7サミット)、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議に出席した。日本の首相としてNATOの会議に出席したのは初めてだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、欧米各国と一層の連携を図る狙いがある。「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」との危機感も働いた。

 一方、外交を選挙のアピール材料にしたい思惑も透けて見える。

 岸田外交のこれまでの成果を冷静に見極めたい。とりわけ近隣諸国との関係で多くの課題が解決されていないのは見過ごせない。

 戦後最悪と呼ばれるほど冷え込んでいる韓国との関係改善は、喫緊の課題の一つだ。

 NATOの会議に合わせて日米韓の首脳会談が約5年ぶりに開かれ、北朝鮮によるミサイル・核開発に対する安全保障協力を強化することで一致した。

 首相は、日韓関係を重視する韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と短時間会話し、関係健全化への韓国側の努力を促したという。ただ、正式な日韓首脳会談は見送られた。

 元徴用工や元慰安婦問題といった懸案を韓国側が解決しない限り応じないとの立場を首相が堅持したためだ。日本は事態打開へ今後どう働きかけていくのか。

 軍事的な動きを活発化させている中国との対話も乏しい。習近平国家主席との会談は、昨年10月に電話で行ったのが最後だ。

 政府が最優先課題としている北朝鮮による拉致問題は解決の糸口さえ見えない。2002年に5人の拉致被害者が帰国してから20年間、1人も取り戻せていない。解決には北朝鮮に影響力のある中国や、韓国との連携が不可欠だ。

 与党の自民党は参院選の公約で、外交と防衛は車の両輪とし、国防予算を国内総生産(GDP)の2%以上とするNATO諸国を念頭に、防衛費を増額するとした。

 公明党は防衛力強化を訴える一方、裏付けとなる防衛費に関し「予算額ありきでない」とする。

 野党第1党の立憲民主党は「着実な安全保障」を掲げ、防衛費については「めりはりある予算で質的向上を図る」などとする。

 日本維新の会はGDP比2%を目安に防衛費を増額するとした。国民民主党は抑止力と反撃力を整備するため必要な防衛費を増やすと唱える。

 共産党、社民党は防衛費増に反対し平和外交を訴えるなど、野党でもスタンスが異なる。

 各党は防衛費増の是非について根拠を明示し、丁寧に説明すべきだ。同時に、近隣諸国とどう対話し、緊張緩和につなげるのかも示してもらいたい。

 日米関係を巡っては沖縄の基地問題や、首相が目指す「核なき世界」と米国による「核の傘」の現実にどう向き合うのかも論点だ。与野党の立ち位置を注視したい。