インターネット上に拡散された不名誉な個人情報が残り続ければ、人生を大きく左右する。判決を契機に、プライバシーが守られる社会への一歩にしたい。

 ツイッターに過去の逮捕歴が表示され続けるのはプライバシーの侵害だとして、米ツイッター社に男性が投稿(ツイート)の削除を求めた訴訟の上告審で、最高裁は削除を命じる判決を言い渡した。

 一審は削除を命じていたが、二審は削除を認めておらず判決が分かれていた。ツイッター記事を巡る初判断となる。

 原告の男性は、2012年に建造物侵入容疑で逮捕され罰金刑を受けた。実名報道の記事を引用したツイートが複数投稿され、就職活動の際、採用担当者がネット上で氏名を検索し逮捕歴が判明して不採用になった。

 影響は人間関係にも及び、知人女性に名前を伝えると、連絡が取れなくなったという。

 判決では、ツイートは長期間の閲覧が想定されていないことや、逮捕から時間が経過して刑の効力がなくなり、逮捕の事実は公共の利害との関わりが小さくなったことを挙げ、原告が逮捕歴を公表されない利益は、一般に閲覧させ続ける理由を上回るとした。

 最高裁は17年、グーグルの検索結果削除を巡り、プライバシー保護が情報公表の利益より「明らかに優越する場合」に限り削除できるとする厳格な基準を示した。

 これ以降の司法判断は、ほとんどの削除請求が認められない状況になっていたという。

 今回の判決は妥当な判断だ。今後はツイッターやフェイスブックなど、検索サイト以外に残る逮捕歴などの情報は再び削除が認められる流れになるとみられる。

 一方、ネット上に残る個人情報の削除を求める「忘れられる権利」について言及せず、従来の司法判断と同様、判決は個別事例の検討に終始した。

 いったんネット上に情報が掲載されると、消し去るのは困難だ。半永久的に情報が残る「デジタルタトゥー」とも呼ばれ、深刻な影響に苦しんでいる人もいる。

 ネット上の望ましくない情報を、消してほしいと願えば消せるようになるべきだとの考えは社会に定着しつつあり、欧州連合(EU)では「忘れられる権利」が法制化され、プライバシー保護の新しい権利として注目されている。

 ただ、むやみに情報が削除されてはならないケースもある。公共性が高かったり、政治家など社会的に影響力を持つ人の情報だったりする場合だ。

 あくまでも民主主義の根幹をなす表現の自由や知る権利が損なわれることのないようにしたい。

 どのような対応が望ましいか、プライバシー保護に向け透明性のある基準づくりが必要だ。今後も議論を深めなくてはならない。