幅広いサービスに直結する通信インフラにひとたび不具合が生じれば、暮らしを直撃し、生命にも関わりかねない。長時間にわたり、甚大な影響を与えた通信事業者の責任は非常に重い。

 KDDI(au)で2日未明から全国で携帯電話の音声通話やデータ通信が利用しづらくなる大規模な通信障害が発生した。

 復旧作業は3日夕に終えたが、音声通話とデータ通信が「全国的にほぼ回復している」と発表したのはさらに丸1日後だった。

 影響は携帯電話の利用者など最大3915万回線に及び、携帯業界では過去最悪の規模となった。

 台風接近を前にした気象のデータ通信や物流システムなど多くのサービスにも影響が生じた。

 けが人が携帯で119番できずに通報が遅れたり、高齢者の安否確認に支障が出たりした。

 KDDIは混乱を招いたことを猛省し、原因究明と再発防止に力を尽くさなければならない。

 発端は、設備の定期メンテナンスだった。音声通話に関する機器を交換した際に不具合が生じ、一部の通話ができなくなった。

 事態を改善させるため、交換前の機器に戻したものの、今度は別の機器にアクセスが集中し、状況はさらに悪化した。

 定期的な点検でなぜ不具合が生じたのか。不具合が連鎖していくことは想定できなかったのか。

 万一トラブルが起きても影響を最小限に抑えることが事業者の責任だ。見通しの甘さが問われる。

 3日に会見した高橋誠社長は「事故を想定できなかったのは、われわれの甘さだ」と認め、利用者への補償を検討するとした。

 総務省は次官級の審議官をKDDIに派遣し、情報収集に当たらせる異例の対応を図った。電気通信事業法上の「重大事故」に当たるとの認識を示し、行政指導などの措置を検討するという。

 国は原因を徹底分析し、復旧体制に問題はなかったのかなど厳正に調べる必要がある。

 通信障害はドコモも昨年10月に起こし、延べ1290万人に影響が出たほか、ソフトバンクでも2018年12月に音声通話が長時間利用できなくなった例がある。

 KDDIは「ドコモの障害後、設計を見直したが、カバーできなかった」と釈明した。

 過去の教訓を生かせなかったのは見過ごせない。国は情報共有を各社に求めていたが、それが図られていたのかも検証すべきだ。

 政府は地方活性化などを目指し、光ファイバー回線の普及などデジタル化の推進を重点施策に掲げる。しかし今回のような問題を再び起こせば、デジタル化に対する国民の信頼は揺らぐ。

 政府と通信業界は、安心して利用できる通信インフラの重要性を改めて肝に銘じ、万全な対策を講じねばならない。