ロシアのウクライナ侵攻や記録的な猛暑で電力の安定供給が喫緊の課題となり、原発再稼働が注目されている。

 だが原発を巡る論戦は参院選が終盤にきても深まったようには見えない。各党は将来を見据え、もっと意見を戦わせてもらいたい。

 電力需給の逼迫(ひっぱく)は長期化する可能性が指摘されている。政府は全国の家庭や企業に夏場の節電を要請したが、冬場はさらに厳しくなるとも予想される。

 供給が厳しい背景には、老朽化した火力発電所の休廃止や、電力会社が目指すようには原発再稼働が進んでいないことがある。

 東京電力福島第1原発事故の後、「原発ゼロ」を掲げた民主党から政権を奪還した自民党は原発活用へかじを切った。

 原子力規制委員会の新規制基準の下で、事故前に稼働していた原発のうち10基がこれまでに再稼働し、発電量に占める再生可能エネルギーの割合は約20%に増えた。それでも現状は「火力頼み」だ。

 岸田文雄首相は「まずは供給力の確保が重要だ」として休止していた火力発電所を再稼働させているが、脱炭素に逆行しかねない。

 そうした中で参院選の各党公約では「原発」が目に留まる。

 自民党は「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」と明記し、再稼働に前向きだ。

 安全性の確認などを条件に、日本維新の会は「可能な限り速やかに再稼働させる」とし、国民民主党は「地元同意を得た原発は再稼働させる」と訴える。NHK党は原発を重要な電源に位置付ける。

 公明党は原発に依存しない社会を目指すとしつつ、条件を満たしたものは再稼働に取り組む。

 それならば原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定をはじめ原子力を巡る課題をどう考えるのか。「再稼働ありき」であってはならない。

 再稼働に距離を置く立憲民主党は「原発に依存しない社会を実現する」としたが、昨年の衆院選公約で示した「原発のない社会」との表現は盛り込まなかった。

 共産党は原発の即時ゼロ、社民党は脱原発、れいわ新選組は即時禁止を主張する。

 原発を再稼働させずに、急を要する電力の安定供給をどう図るか、丁寧に説明してもらいたい。

 東電柏崎刈羽原発は核物質防護体制の不備が相次いで発覚し、再稼働問題自体が凍結状態にある。

 課題が山積しているからこそ、選挙戦では原発と地域の今後について考えを示してほしいのだが、新潟選挙区の候補者たちに再稼働問題を積極的に語る姿勢は見られない。極めて残念だ。

 地域とエネルギーの将来を真剣に考える候補者は誰か、私たち有権者はしっかりと見極めたい。