普及が進まないからといって、国の責任を地方に押しつけるのは筋が違う。自治体の反発を重く受け止め、見直すべきだ。

 総務省がマイナンバーカードの普及遅れを受け、住民の取得率が平均未満の約630自治体を「重点的フォローアップ対象団体」に指定し、対策強化を要請していることが分かった。

 住民の取得率に応じて来年度から地方交付税の配分額に格差をつける方針も打ち出した。

 政府は、行政サービスの円滑化などを目的に、来年3月末までにほぼ全国民にカードを行き渡らせるという目標を掲げている。

 さまざまな手段で自治体に圧力を強めているのはそのためだ。全国の取得率は現在45%と低迷している。残り約9カ月で急上昇させなければならない。

 しかし、交付税に差をつけるというのは看過できない。

 総務省は地方への圧力ではないとし、「カード取得率の高い自治体はデジタル化に伴う経費も多くなるので、交付税で手当てする必要がある」と説明するが、額面通りには受け取れない。

 政府関係者は自治体にハッパをかけるため、交付税という自治体の生命線に手を付ける「最終手段」と打ち明ける。

 交付税は地方の財源不足を補うために国から配られる地方固有の財源だ。自治体ごとの配分額は、人口や面積、道路延長などを基に算定される。

 国の政策推進のために配分に差をつけるというのは不適切ではないか。交付税で手当てするならカード導入当初から実施しなければ不自然との指摘も出ている。

 デジタル化に伴う経費分を補うなら、補助金や交付金で支援する方法もある。

 国の方針に自治体から「国と地方は対等とした地方分権に反する圧力」「兵糧攻め」などと強い批判が上がっている。

 本県の花角英世知事は「市町村にとって交付税は非常に大事な財源。制度をいじるとしたら丁寧な説明が必要」と述べた。

 カードの取得が進まないのは、国民にメリットが見えないことが最大の要因だろう。

 将来的には運転免許証との一体化が検討されているが、現在はコンビニでの住民票発行や健康保険証などに利用できる程度で、日常で使う場面は限られる。個人情報が悪用されないか不安もある。

 国は高額のポイントを付与する誘導策も導入したが、重要なのは、カードの必要性や活用策を根気強く説明していくことだ。

 多くの自治体は人手不足の中、広報の強化や出張申請、休日受け付けを行っている。通常の窓口対応で手いっぱいの市町村もある。

 国は、こうした地方をサポートすることにこそ、もっと力を入れるべきだ。