女性や若年層の関心が高いテーマの一つなのに、置き去りにされている感がある。性別には関係なく誰もが平等に生きられる社会をどう築くのか、議論を深めてもらいたい。
世界経済フォーラムがまとめた昨年の男女格差報告(ジェンダー・ギャップ指数)によると、日本は156カ国中120位だった。先進国では最低のレベルだ。
政治、経済、教育、健康の4分野があり、政治分野では女性の閣僚、国会議員比率が少ない日本は147位にまで下がる。
今回の参院選で各党はジェンダー関連の公約を掲げている。物価高対策や安全保障といった争点の中で目立たないが、国際社会に並ぶ対応を求められている。
政府は6月、女性活躍推進策をまとめた重点方針を決定した。特徴は「女性の人生と家族の姿は多様化し、昭和の時代の想定は通用しない」と指摘したことだ。
配偶者控除など昭和から続く「制度」、男は外で働き女は家を守るといった「固定的な性別役割分担意識」、賃金格差を含む「労働慣行」からの脱却を求めた。
何を今更と受け止める人もいるだろうが、政府が示したことは前進だ。格差解消の道筋を明確にし、着実に実行してもらいたい。
与野党の方向性が一致している公約もある。賃金格差の是正ついて、与党側は「女性の経済的自立を強力に支援」するとし、野党側は「同一価値労働同一賃金の法制化」などと訴える。
内閣官房によると、日本の女性の賃金は男性の8割弱にとどまる。女性の管理職比率の低さ、非正規労働者に占める割合の高さが影響しているようだ。
新型ウイルス禍で女性の生活困窮、性的搾取、自殺増などが表面化する中、5月に「困難な問題を抱える女性支援法」が成立した。
2024年4月に施行され、国は基本方針、都道府県は基本計画を作る。支援の責務がある国と自治体は実態に即し、時代に合った包括的な支援態勢を速やかに築かねばならない。
「女性活躍」の実現には男性への支援も欠かせない。参院選公約には「男女とも育休中の賃金保障実質100%へ法改正」「家族的責任がある労働者の単身赴任の原則禁止」などの訴えも並ぶ。
LGBTQ(性的少数者)への差別解消も急ぎたい。日本の若者の8割近くが、性的少数者への差別を禁じる法律制定に賛成しているという調査結果もある。
参院選公約を見ると、伝統的な男女観が根強い自民党と、差別解消や同性婚実現への法整備を唱える他党との隔たりは大きい。
多様な考えを政策に反映させるには国会はどうあるべきか。参院選ではそのことも問われている。
