連携を築けぬまま巨大与党に立ち向かっても、議席数を伸ばすことは難しい。ある程度予想されていた野党の敗北に驚きはない。

 問われるのは、縮小した野党が今後の国会論戦で与党にしっかりと対峙(たいじ)し、緊張感を生み出すことができるかだ。抜本的な立て直しが求められる。

 参院選は自民党が改選過半数を確保して大勝した一方、野党は日本維新の会などを除き、複数の党が議席を減らす結果になった。新潟選挙区では野党第1党、立憲民主党の現職森裕子氏が落選した。

 新潟のように与野党対決が注目された32の改選1人区で野党系が勝ったのは4選挙区にすぎない。

 維新を除く野党勢力が全ての1人区で候補を一本化し、11勝した2016年、10勝した19年に比べ、驚くほど衰退した。

 参院選で野党は物価高対策を最大の争点に位置付け、消費税減税などを訴えた。

 共同通信社の出口調査では有権者の67%が投票先を決める際に物価高を考慮したと答えたものの、野党の票にはつながらなかった。

 従来の野党共闘の枠組みが崩れたことが大きいだろう。

 背景には、自民が憲法改正に一定の理解がある国民民主党の玉木雄一郎代表の取り込みを図るなど、時間をかけて野党の分断を仕掛けてきたことが指摘される。

 自民大勝で気になるのは、今後の国会運営で与党主導がさらに強まりかねないことだ。

 岸田文雄首相は11日の記者会見で、現状を戦後最大級の危機に直面しているとし「有事の政権運営を考えなければならない。与党、自民党に結束を呼び掛けたい」と強調した。有事を意識して足場を固めたい思いがあるのだろう。

 だが参院選の街頭演説では山際大志郎経済再生担当相が「野党の話は、政府は何一つ聞かない」と発言した。その後釈明したとはいえ、政権のおごりが気に掛かる。

 公約に掲げた憲法改正を巡って首相は会見で「秋に予定される臨時国会で一層活発な論議が行われることを期待する」とし、議論が加速する可能性をにじませた。

 改憲を前提にした議論が拙速に進むことは避けたい。議論を十分に深めていくには、野党の存在が極めて重要だ。

 改憲に前向きな維新や国民、慎重姿勢の立民など、各党がどう論戦に臨むか注目したい。

 立民は昨年10月の衆院選でも議席を減らした。その後代表に就いた泉健太氏は「批判一辺倒」から「政策立案型」に転換したが、与党との対立軸は見えにくい。

 泉代表は、参院選敗北を受けた辞任や執行部刷新を否定する。党の再生や各党との連携をどう構築していくのか。責任は重い。

 敗因をしっかり分析し、本気で立て直しを図らなくては、与党に太刀打ちなどできない。