古い価値観が残る日本の政治を変えることはできるか。世界でも遅れているジェンダー意識を高め、平等な社会を実現していくことに期待したい。

 10日に投開票された参院選で、女性の当選者は選挙区21人、比例代表14人の合わせて35人に達した。2016、19年の28人を上回った。当選者全体に占める割合も過去最高になった。

 非改選を合わせると、女性の参院議員は全体で64人になる。4人に1人の割合だ。

 それでも世界の水準には到底追い付かない。世界経済フォーラムが発表した22年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」によると、日本の男女平等度は146カ国中116位だった。

 特に政治分野は女性議員や閣僚の少なさから139位に沈み、先進7カ国とアジア太平洋地域19カ国のいずれでも最下位だった。

 衆院の女性比率はわずか9・9%、岸田内閣の閣僚19人中女性は2人に過ぎない。改善に取り組む日本の本気度が問われよう。

 女性の国会議員が増えるメリットは大きいはずだ。法律立案などで多様な国民の意見を反映させることができる。

 子育てや教育、性暴力・性被害対策などの政策が女性目線に近づくとの期待もある。選択的夫婦別姓などの議論も注目される。

 意思決定の場に参画する女性が増えることは「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担意識を払(ふっ)拭(しょく)するきっかけにもなるだろう。

 今回立候補した女性は181人だった。候補者全体に占める割合は、衆院選を含む戦後の国政選挙で初めて3割を超えた。

 18年施行の「政治分野の男女共同参画推進法」に基づき、多くの党が候補者に占める女性比率をあらかじめ設定したためだ。

 20年に政府が第5次男女共同参画基本計画で、35%の比率目標を掲げたことも追い風になった。

 立憲民主党、共産党、国民民主党などは候補者の4~5割を女性とした。当選した割合もほぼ同じ結果になった。

 一方、自民党の候補者、当選者に占める女性の割合はそれぞれ2割台にとどまった。選挙区の現職は男性が多く、女性の新人擁立は困難な面があるのだろう。

 女性を増やすには、候補者や議会定数の一定比率を女性に割り当てるクオータ制が有効だとして、野党の多くが政策に掲げている。自民党も検討すべきだろう。

 当選後の議員活動への支援も欠かせない。野党が公約でうたうメンター(指南役)制度や、出産前後を想定したオンライン審議などの議会改革は大切な視点だ。

 来春行われる統一地方選では、地方議会で女性議員を増やす取り組みが求められる。地域の課題を解決するためにも多様な視点が欠かせないのは当然だ。