新型コロナウイルスの流行「第7波」はこれまでにない勢いで急拡大し、感染者数の最多更新が続いている。

 岸田文雄首相は社会経済活動の維持に重点を置き、特段の行動制限をしない考えだが、いかにして感染拡大に歯止めをかけようとしているのか伝わらない。

 医療が逼迫(ひっぱく)してから手を打つのでは遅い。首相はこれまでのウイルス禍の教訓を踏まえて後手に回ることなく対策を示し、国民に向けて明確なメッセージを発してもらいたい。

 新型ウイルス感染者は23日に全国で20万人を超えた。第6波ピークの10万4千人より倍増し、著しく拡大している。

 外来診療に患者が押し寄せ、各地で病床使用率が高まってきているのに加え、医療従事者の感染も増えている。感染者がこのまま増え続ければ、医療が差し迫った状態に陥ることが懸念される。

 本県は現時点で医療が逼迫する状況にはないというが、県は25日、症状が出ても重症化リスクが低い人は、自宅で検査してもらう方法に切り替えた。

 従来は症状が出た人はかかりつけ医か受診・相談センターに連絡していたが、今後は県のホームページで申請し、1、2日後に自宅へ届く抗原検査キットで陽性が確認されてから連絡する。

 重症化リスクが高い高齢者や持病がある人への医療提供を早めることが目的だ。現場の負担を減らすにはやむを得ない対応だろう。

 重症化リスクにかかわらず、症状が重い人がすぐに医療を受けられる体制を整えてもらいたい。

 デジタルに対応できない人への目配りも忘れないでほしい。

 感染者の濃厚接触者について、国は待機期間をこれまでの7日間から5日間に短縮した。抗原検査で2回続けて陰性が確認されれば、感染者との接触から3日目に待機を解除する。

 欠勤を余儀なくされる濃厚接触者が増え、社会経済活動が維持できなくなる恐れがあるためだ。

 厚生労働省は、この対応で待機解除後に濃厚接触者が発症する可能性は、市中の陽性率と同等だとし、これにより感染が拡大することはないとの見解だ。客観的エビデンス(根拠)に従ったという。

 だが気付かぬうちに感染を広げてしまうのではないかと不安に思う濃厚接触者はいるだろう。

 なぜ対応を切り替えても問題はないといえるか、政府は専門家の知見も踏まえて、国民にもっと丁寧に説明するべきではないか。

 感染状況をしっかりと見極め、医療現場の状況などによっては、一段と強い対策を講じることもためらうべきではない。

 検査体制の変更や待機期間の緩和により、感染防止対策に緩みを招いてはいけない。引き続きしっかりと対策を講じたい。