反社会的な活動が問題になった組織だ。どんな目的で政界に接触してくるのか。政治家はなぜ拒絶せずに付き合うのか。政治との関係が徹底追及されねばならない。

 奈良市での安倍晋三元首相銃撃事件を契機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界との関係が次々と明らかになっている。

 安倍氏実弟の岸信夫防衛相は選挙の際、教団関係者から手伝いを受けたと説明した。教団が過去に霊感商法で社会問題化したことを認識していたと明らかにした。

 二之湯(にのゆ)智(さとし)国家公安委員長は教団関連団体のイベントで実行委員長を務め、あいさつをした。末松信介(しんすけ)文部科学相は教団関係者にパーティー券を購入してもらい、磯崎仁彦(よしひこ)官房副長官も教団が関わる行事に来賓として出席した。

 他にも教団と関係する自民党国会議員、知事、地方議員が続々と浮かび上がる。国民民主党の玉木雄一郎代表や立憲民主党、日本維新の会の議員も関わりがあった。

 教団には国会議員を「広告塔」として利用し、社会問題化をかわす狙いがあるとの指摘がある。なぜ関係を持つのか、政治家は説明を尽くしてもらいたい。

 霊感商法はマインドコントロールされた状態の相手に高価なつぼや印鑑などを買わせる行為だ。被害者が1980年代後半から各地で損害賠償を求める訴訟を起こし、教団側の敗訴が続いた。

 入信や勧誘の手法、多額の献金なども問題視され、県内でも複数の元信者らが慰謝料などを求めて教団を訴えている。

 教団は2009年にコンプライアンスを順守すると発表したが、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、09年以降も被害相談額は約175億円に上っている。

 安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者の母親も1990年代、教団に入信して総額1億円を献金、生活が困窮して家庭崩壊したという。

 教団に恨みを抱いたとみられる山上容疑者は、教団と安倍氏がつながっていると思い、狙ったと供述している。安倍氏が生前、教団の友好団体にビデオメッセージの祝辞を寄せるなどしていたことが背景にあるのだろう。

 どんな理由があろうとも殺害は絶対に許されない。その動機を解明するには、教団と政界をつなぐ闇を照らすことが欠かせない。

 教団は90年代から「統一教会」の名称変更を希望したとされるが、文化庁が一転して受理したのは2015年で、当時の文科相は下村博文(はくぶん)氏だった。下村氏の関与があったのか、気になるところだ。

 自民党の茂木(もてぎ)敏充幹事長は「党としては(教団と)一切関係がない」と述べ、議員個々の問題だとするが容易に納得できない。

 及び腰の自民に対し、野党は政界と教団との関係を徹底的に追及する構えだ。自らもうみを出し切る覚悟で臨んでもらいたい。