企画展「戦争を考える2022ー日常に入り込んだ戦争ー」=新潟市中央区旭町通2、新潟大学旭町学術資料展示館 

 新潟市中央区の新潟大旭町学術資料展示館で開かれている企画展「戦争を考える2022-日常に入り込んだ戦争-」。昭和初期を中心に作られ、国内に出回っていた着物や帯、時計などが展示されている。

 身の回りの品々にデザインされているのは戦艦や戦車、「日ノ丸マモレ」の文字…。国民の心を戦争に向かわせる「戦争プロパガンダ」だ。

 プロパガンダが当時の国民の生活に広く浸透していたことを示す展示品から5点を紹介し、戦争の悲惨さと平和の大切さを改めて考える。(報道部・池柚里香)

※新潟日報社の20代記者が企画展の中で、気になった展示品を紹介し、感想を書いています。

※プロパガンダ…特定の主義や思想によって、個人や集団に影響を与え、思想や行動を意図した方向へと誘導するための宣伝戦略・活動。国家における思想統制や政治活動も指す。

◆『面白柄』の古布

 素材=絹、年代=明治後期、所蔵=橋本博文・新潟大名誉教授

  展示を企画した新潟大学・橋本博文名誉教授が、新潟市中央区の古布店で購入した布だ。描かれている船と行列は室町時代から江戸時代にかけて、将軍の代替わりごとに日本を訪れた「朝鮮通信使」。独特な文様は、北海道の先住民族アイヌの伝統柄だ。一見、何の関係もない二つの柄が共存しているのはなぜか。

 この布が作られたのは1910年頃と考えられている。当時日本は日露戦争に勝利し、朝鮮半島を併合した。アイヌ民族に対しても、日本風の名前を付けさせ日本語教育を行う「同化政策」を行ってきた。日本と朝鮮の長きにわたる関係の歴史と、日本がアイヌを侵略し支配してきた歴史を巧みに組み合わせ、日本と朝鮮、アイヌは「同一の民族」だというメッセージを打ち出している。

◆取材メモ

 戦争が始まるとき、侵略行為を正当化するための大義名分が用意されます。「もともと『同じ民族』だから、領土を統合し、支配下に置く」という主張は、侵略者にとって格好の大義名分になるのでしょう。ロシアのウクライナ侵攻に際しても、同様の主張がありました。文化を奪い、言語を奪い、アイデンティティーを奪っていく…。「多様性を認めず、同一のものとして扱う」ことの危険性を改めて感じました。

■企画展「戦争を考える2022-日常に入り込んだ戦争-」

【会場】新潟大旭町学術資料展示館
【期間】8月19日まで。月、火曜、10〜12日休館
【開館時間】午前10時〜12時、午後1時〜4時半。入場無料
【問い合わせ】025(227)2260。

※他の掲載回は下のリンクからもご覧になれます。

第2回 フクちゃん(翼賛一家)

第3回 子供、飛行機、戦車

第4回 ブロンズ戦闘機

第5回 軍隊の行進