企画展「戦争を考える2022ー日常に入り込んだ戦争ー」=新潟市中央区旭町通2、新潟大学旭町学術資料展示館

 新潟市中央区の新潟大旭町学術資料展示館で開かれている企画展「戦争を考える2022-日常に入り込んだ戦争-」。昭和初期を中心に作られ、国内に出回っていた着物や帯、時計などが展示されている。

 新潟日報社の20代記者が企画展の中で、気になった展示品を紹介する。

◆軍隊の行進

素材=絹、年代=昭和初期、所蔵=笹川太郎氏(新潟ハイカラ文庫主宰)

 戦争プロパガンダの主なターゲットは、実際の戦力として期待された男性や少年だった。しかしこの帯は女性用だ。どんな色とも相性の良い淡いベージュ地の上を、武装した軍隊が行進する。兵士たちの軍服の裾や帽子の飾り、掲げている国旗や機関銃に細かい刺しゅうがあしらわれている。

 ユニークな柄や手の込んだ加工で、シンプルな着物に合わせるとおしゃれであか抜けた印象になる。プロパガンダの狙いを残しつつ、戦争の血なまぐささを取り除いた秀逸なデザインが特徴的だ。

 戦争柄を流行のデザインに仕立て上げることで、「はやりを先取りしたい」「周りがうらやむような、おしゃれなものを身に付けたい」という消費者の心理を利用し、戦争を日常生活に溶け込ませる戦略があった。

◆取材メモ

 デザイン性の高い柄は、現代の価値観で見ても洗練されている印象を持ちます。「戦争らしさ」を排除し、おしゃれに見えるようイメージを塗り替え、女性もプロパガンダの対象としていたことが分かりました。特に戦地の現実を知り得ない女性たちの戦争イメージに、大きな影響を与えたのではないでしょうか。私自身も当時生きていたら、その影響を避けることは難しいかもしれないと感じました。

◆[取材後記]語り部は「物」へ、どう耳を傾けるか

 「このまま戦争経験者が少なくなっていけば、語り部となるのは遺(のこ)された『物』たちだ」と、新潟大学の橋本博文名誉教授は語る。当時の政府が情報操作をした理由は、国民を戦争に巻き込み、戦争を有利に進めるためだった。国民に戦争の真実を伝えない。重い「戦争犯罪」の証しが、今回展示された戦争遺物だ。

 時代の証人ともいえる戦争遺物に触れ、戦争がもたらした数え切れない苦しみや悲しみに思いをはせる-。同じ過ちを繰り返さないために、何ができるだろうか。戦争遺物を大切に保存し、次の世代に受け継いでいくことが、私たちの責務だと思う。

(報道部・池柚里香)

=おわり=

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 新潟市中央区の新潟大旭町学術資料展示館で開かれている企画展「戦争を考える2022-日常に入り込んだ戦争-」。昭和初期を中心に作られ、国内に出回っていた着物や帯、時計などが展示されている。

 身の回りの品々にデザインされているのは戦艦や戦車、「日ノ丸マモレ」の文字…。国民の心を戦争に向かわせる「戦争プロパガンダ」だ。

 プロパガンダが当時の国民の生活に広く浸透していたことを示す展示品から5点を紹介し、戦争の悲惨さと平和の大切さを改めて考える。

※プロパガンダ…特定の主義や思想によって、個人や集団に影響を与え、思想や行動を意図した方向へと誘導するための宣伝戦略・活動。国家における思想統制や政治活動も指す。

■企画展「戦争を考える2022-日常に入り込んだ戦争-」

【会場】新潟大旭町学術資料展示館
【期間】8月19日まで。月、火曜、10〜12日休館
【開館時間】午前10時〜12時、午後1時〜4時半。入場無料
【問い合わせ】025(227)2260。

※過去の掲載回は下のリンクからもご覧になれます。

第1回 『面白柄』の古布 

第2回 フクちゃん(翼賛一家)

第3回 子供、飛行機、戦車

第4回 ブロンズ戦闘機