感染急拡大を食い止めるために政府が地方を後押しするのは当然だが、地方の対応を後追いして仕組みを作るだけでは心もとない。桁違いの感染拡大を抑えるにはもっと実効性のある対応が必要だ。

 新型コロナウイルスのオミクロン株の派生型BA・5による感染拡大を抑えるため、政府は都道府県が自主判断で発信できる「BA・5対策強化宣言」を新設した。

 医療現場の負担が高い場合に宣言する。本県は感染者用の病床使用率が医療逼迫(ひっぱく)の目安となる50%超に達したことから、2日に宣言する方向で調整している。

 政府によると、宣言は高齢者や基礎疾患を持つ人に混雑した場所への外出を控えるよう要請するほか、ワクチンの早期接種などを呼び掛けることがポイントだ。

 一律に行動制限を求めたこれまでと違い、社会経済活動の維持に重点を置きつつ、都道府県の対策が円滑に進むよう支援する。まん延防止等重点措置の発動や店舗への休業要請などは伴わない。

 宣言は、全国知事会がBA・5に関する方針を示すよう求めたことで政府が新設したが、柱となる高齢者の外出自粛については沖縄県などが既に呼び掛けている。

 地方の取り組みに「お墨付き」を与え、後押しすると言えば聞こえはいいが、新味はなく、政府の主体性も感じられない。

 首をかしげたくなるのは、高齢者への外出自粛の要請が、感染急拡大の抑止になるかどうかだ。

 現在、感染は多くの地域で「30代以下」を中心に広がっている。

 感染した場所は、全年代にわたって自宅が最も多く、60代以上の場合、リスクの高い外出先と言えそうな「飲食店」や「遊興施設」などは少ない。一方で20代や30代は「事業所」と「飲食店」で多くの人が感染している。

 高齢者に外出を控えてもらうより、若い世代が集まるイベントや旅行、飲食の場に制限をかけることを優先した方が良いという専門家の指摘はうなずける。

 政府は感染状況やウイルスの特性を見極め、後手にならずに必要な対策を講じなくてはならない。

 お盆休みのある8月は広範囲に移動する人が増える。

 2、3日に3年ぶりに開催される「長岡まつり大花火大会」をはじめ、久しぶりのイベントを心待ちにしている人は多い。

 そうした機会に若年層から重症化リスクが高い高齢者らに感染が広がり、医療現場の負担増を招くような事態は避けねばならない。

 帰省で高齢者に会う場合は事前に検査し、感染の有無を確かめるように心がけたい。

 混雑するイベント会場ではマスクを着け、大声を出さないといった行動が不可欠だろう。

 政府や自治体には、若年層にも届くように、感染防止対策の発信に力を入れてほしい。