多くの人命を一瞬で奪った原爆投下から77年がたつ。きょう6日は広島市で、9日は長崎市で平和式典が開かれる。

 犠牲者に祈りをささげ、唯一の戦争被爆国として「核なき世界」への誓いを新たにしたい。

 世界でかつてないほど核兵器使用の恐れが高まっている。被爆の実相を伝えることは日本にしかできない重要な役割だ。課せられた責務を果たさねばならない。

 原爆の語り部たちは高齢化し、全国で被爆者健康手帳を持つ人は2021年度末で約11万9千人、平均年齢は84・53歳となった。

 本県の原爆被害者の会も20年度末で活動を停止した。

 体験者から直接惨禍を聞くことのできる時間は残り少ない。

 昨年10月には核兵器廃絶と被爆者援護の活動に尽力した坪井直(すなお)さんが96歳で他界した。

 「こんな愚かな兵器は一刻も早くゼロにしないと、人類の生存が危うい」-その悲痛な言葉がいま現実味を帯びて聞こえる。

 新潟日報社が加盟する日本世論調査会の調査では、10年以内に核兵器が戦争に使われる可能性が「ある」とした人は59%で、「ない」の40%を上回った。

 ストックホルム国際平和研究所は、世界の核弾頭数が「冷戦後初めて増加に転じる可能性」があると警鐘を鳴らす。

 折しも米ニューヨークで7年ぶりに核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれている。核保有国と非保有国との協議は難航が予想されている。

 広島の平和式典に出席するグテレス国連事務総長は「核の使用は決して容認できないと、核保有国に要求するのに日本ほどふさわしい国はない」と強調し、被爆国としての役割に期待した。

 NPT会議に出席した岸田文雄首相は、次世代のリーダーとなる各国の若者に広島・長崎訪問を促す国連基金の創設を表明した。

 だが、日本政府の踏み込み不足を指摘する声は大きい。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のフィン事務局長は「日本が自ら動くべきだ」と述べ、保有国に核軍縮などを要求するだけでなく、米国の「核の傘」に頼る安全保障からの脱却を求めた。

 背景には日本が核兵器禁止条約に参加していないことがある。条約は核兵器は違法だと断じ、核廃絶を掲げて核開発や核使用の威嚇などを禁じている。

 6月の第1回条約締約国会議は日米などを念頭に「核保有国も『核の傘』の下にいる同盟国も、核への依存を減らす真剣な取り組みを行っていない」と批判した。

 広島、長崎両市長は政府に条約参加を求めている。広島出身の岸田首相には被爆者の思いを受け止め、決断してもらいたい。

 核軍縮は待ったなしだ。日本の行動が問われている。