野球の本場で1世紀以上、誰も届かなかった高みについに到達した。偉業を心からたたえたい。
米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が9日のアスレチックス戦で今季10勝目を挙げ、1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」を達成した。
プロの世界で通用するのは難しいとみられていた投打の「二刀流」の道をぶれずに進み、たゆまぬ努力で才能を伸ばしてきた。その結果が、大リーグ5年目での金字塔につながった。
試合後、「単純に二つやっている人がいなかったというだけかなと思う。当たり前になってくれば、もしかしたら普通の数字かもしれない」と語った。常に謙虚でひたむきに野球に打ち込んできた姿勢がコメントからもうかがえる。
この日の試合は、投打で最高のプレーを発揮した。投げては6回を4安打無失点。変化球のスプリットとカーブを駆使して、前回敗れた相手打線を封じ込めた。
三回に左足付近に打球を受けたが、不屈の闘志で乗り越えた。七回の打席では25号本塁打を放って通算118本とし、イチローさんの記録を超えた。
偉業達成の原動力になったのは、投手としての進化だ。二刀流の経験を生かして相手打者の心理を読み、時に変化球の投げ方を変えて三振の山を築いてきた。
だが、ここまでの道のりは順風だったわけではない。
大リーグ1年目の2018年は初登板初勝利、3戦連続本塁打の離れ業を演じて新人王に輝いたが、右肘を痛めシーズン後に靱帯(じんたい)再建手術をした。19、20年は不振にあえぎ、左膝の手術も受けた。
昨季は復活を果たし、投手で9勝、打者でも46本塁打を放つなどア・リーグの最優秀選手(MVP)に初めて選出された。
大谷選手の二刀流は、大リーグのルールをも変えた。昨季の活躍で、投手降板後も指名打者で出場を続けられる通称「大谷ルール」が今季から導入された。
ファンにとっては楽しみが増えたが、投打同時出場が当たり前となった大谷選手は休養をとらず、ほぼ毎試合打席に立つ。桁違いの超人ぶりに驚かされる。
「野球の神様」に並んだ背番号17は、次にどんな快挙を成し遂げるのか期待したい。
