地球温暖化などの気候変動によって、多くの農作物の作柄に異変が生じている。
共同通信社が5~7月に行った全国調査で、品質低下や収穫量減少などの影響が出ていると都道府県が捉えている農作物が、合計70品目以上に上った。
具体的には、コメに亀裂が入り割れやすくなる「胴割粒(どうわれりゅう)」の発生や、ブドウやリンゴなど果物の着色不良、キクの花の奇形といった影響が指摘された。
「食」の危機が足元に迫っていることを深刻に受け止めなければならない。
水管理など基本技術の徹底で目の前の影響を抑えつつ、中長期的には品種改良などの適応策を加速させていく必要がある。
品目別で影響があるとの回答が最も多かったのはコメで、本県をはじめ43道府県に上る。ブドウ31道府県、ナシ28府県、トマト、キク類がそれぞれ20県と続いた。
都道府県別で、影響が最も多いのは岐阜県で28品目、本県はコメや柿など10品目を挙げた。
主力作物の代表であるコメは、本県でも2018年に高温少雨や台風のフェーン現象により干ばつ被害を受けた。翌19年も猛暑でコシヒカリの品質が1等米比率25%と大きく落ち込んだ。
多くの産地では、作業時期の見直しや暑さに強い品種の開発などの取り組みを既に進めている。
本県の場合、収穫時期がコシヒカリより遅い晩生(おくて)品種で、コシヒカリと並ぶ本県ブランド米の新之助を開発した。19年の猛暑では1等米比率が98・6%と、コシヒカリに比べ高い品質を保った。
その新之助も21年産は88・0%に下がり、17年のデビュー以来初めて90%を割り込んだ。収穫前の9月下旬の高温と乾燥が影響したとみられる。
今夏も猛暑が続く。県などはきめ細かな情報提供や栽培指導を徹底してほしい。
柿や西洋ナシ(ル・レクチエ)といった果樹では、18年に開花期の天候不順で果実の肥大が遅れる影響が出た。
果樹の場合、植え替え時に合わせ、温暖な地域でしか作れなかった作物を戦略的に導入することも選択肢の一つだろう。
温州ミカンの産地である愛媛県では、地中海に面したイタリア原産のブラッドオレンジの産地化を進めている。
環境省や国立環境研究所のデータをもとにした本県のまとめによると、最も温暖化が進行した場合、21世紀末の県の年平均気温は、20世紀末に比べ約5度上昇する。
県内では佐渡南部などごく一部で作られているミカンが、沿岸部のほぼ全域で栽培できる気候になる可能性があるという。
一方、品質を重視した場合のコメの収量は県内のほぼ全域で半分以下になる懸念がある。
温暖化の影響は地域によって異なる。県や市町村、生産者らが連携して先手を打ち、土地に合った対策を進めていくことが必須だ。国は持続可能な農業に向けてしっかりと支援してほしい。
