軍事政権の目に余る横暴を許すことはできない。国際社会は結束し断固たる態度で臨むべきだ。

 ミャンマー国軍は7月、収監中のアウンサンスーチー氏の側近の一人だった国民民主連盟(NLD)の元議員ら民主活動家2人を含む4人の死刑を執行した。

 4人のうち民主活動家の2人は、国軍に対抗し、武器を調達して行政関係者らの殺害をはじめとする「テロ行為」に関与したとして、軍事法廷が1月に死刑判決を下していた。

 別の2人は、国軍の協力者という女性への殺人罪に問われた。

 地元メディアによると、政治犯の死刑執行は1976年以来で、政治犯以外も30年以上執行されていなかった。

 国軍の報道官は、法律に従って執行したと述べ、正当性を主張している。しかし、裁判所は国軍の統制下にあり、審理も非公開で行われた。公正な裁判とは到底、言うことはできない。

 国際社会からの要請を無視して強行したことも見過ごせない。国連や米欧のほか、ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のカンボジアも執行しないよう求めていた。

 死刑の執行後、日米韓など8カ国と欧州連合(EU)の外相が、非難声明を発表し圧力を強化する方針を明らかにしたのは当然だ。

 軍事政権はますます強権体制を強めている。

 軟禁していたスーチー氏についても6月に、首都ネピドーの刑務所に収監した。

 スーチー氏は2021年2月のクーデター後、汚職など約20件で起訴され、裁判が続いている。今後は刑務所内に新設した法廷で審理されるという。

 ミャンマーの人権団体によると、国軍はクーデター後117人に死刑判決を下した。弾圧の死者は7月末までに2千人超、拘束された市民は約1万5千人に上る。

 国軍への抗議デモを撮影していた日本のドキュメンタリー制作者、久保田徹さんも拘束された。

 久保田さんは、扇動や入国管理法違反の疑いで訴追され、政治犯収容先の刑務所に移送された。国軍が裁判に向けた手続きを進めているとみられる。

 日本政府は早期解放を求めているが、国軍側には動きがみられない。政府は対話と交渉を重ね、一刻も早い解放を実現してほしい。

 日本はクーデター後、軍事政権に対して、新規の政府開発援助(ODA)を停止したが、大型インフラ開発を含めた既存の案件は続けている。

 こうした姿勢は、軍に融和的だと指摘され、0DAのさらなる見直しや、軍幹部への経済制裁などを求める声もある。

 事態打開に向けて、政府は毅然(きぜん)とした姿勢で働き掛けを続けなくてはならない。