史上最年少での名人と七冠の獲得だ。20歳の若者が成し遂げた偉業をたたえたい。前人未踏の八大タイトル全制覇へ向け、さらなる研さんを重ねてほしい。

 将棋の藤井聡太六冠が第81期名人戦7番勝負第5局で、渡辺明名人を破り、4勝1敗で名人を初獲得した。20歳10カ月での名人獲得は、1983年の谷川浩司17世名人の21歳2カ月の記録を40年ぶりに更新した。

 保持する竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖と合わせ七冠にもなった。7タイトル時代の96年に、羽生善治九段が全冠制覇した25歳4カ月の記録も塗り替えた。

 将棋界に新たな歴史を刻んだ。棋士を目指す子どもたちにも大きな刺激を与えたことだろう。

 名人は江戸時代から続き最も歴史がある称号だ。プロ入りすると一番下のC級2組からスタートし昇級を重ねA級で優勝してようややく7番勝負に出ることができ、ほかのタイトル戦より厳しい。

 藤井名人でも挑戦まで6年かかった。対局後「名人は重いと思うので、その立場にふさわしい将棋を指したい」と語った。

 名人として、今後どのような戦いを見せるのか楽しみだ。

 2016年に最年少14歳2カ月でプロ入りした藤井名人は、デビューから無敗で最多の29連勝し、藤井ブームを巻き起こした。20年の棋聖戦で初タイトルを奪取して以降、出場したタイトル戦は全て制している。

 22年度の勝率は8割2分8厘で、8割以上の勝率は6年連続だ。

 その強さは、日々の努力と人工知能(AI)を駆使した研究にある。苦手だった序盤、中盤をAIを用いて克服しただけでなく、自分の力だけで考え抜いた積み重ねで圧倒的な実力を付けた。

 膨大な読みの量から正解を導き出し、ペースを握るとそのまま押し切る対局が目立つ。名人戦でも深い読みで、攻守に的確な指し手を披露した。

 初の八冠制覇へ残るは王座のみとなった。王座への挑戦者を決めるトーナメントで初戦を突破しており、あと3勝すれば、秋に行われる王座戦5番勝負に出場する。

 棋聖戦や王位戦でのタイトル防衛戦を続けながらの厳しい戦いになる。万全のコンディションで臨んでもらいたい。

 藤井人気で活況を呈する将棋界だが、他の棋士の奮闘も期待したい。盤上での熱い戦いで、将棋の魅力や奥深さを伝えてほしい。