国の根幹に関わる法律が立て続けに成立した。半面、積み残された課題は多く、議論が納得いくまで尽くされたとは言い難い。
通常国会が21日、閉幕した。防衛費増額の財源確保特別措置法や、原発の60年超運転を可能にする束ね法「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」などが成立した。
ロシアによるウクライナ侵攻に伴う安全保障環境の変化や、エネルギー危機を背景に、政府は今国会中の重要課題決着を急いだ。
歴史的な政策転換につながる法が相次いで成立した点で、節目となる国会だったと言えるだろう。
ただ、肝心の論戦が深まったかには疑問がある。
防衛力についての議論では、岸田文雄首相は反撃能力(敵基地攻撃能力)などで具体論に踏み込まず、「個別に判断する」としてかわすことが多かった。
原発を巡っては、抑制的な政策を転換し、積極利用へかじを切ったが、東京電力福島第1原発事故による廃炉作業の完了や、核のごみに関する問題に明確な道筋を示すことはなかった。
防衛費や、政権が最重要政策に位置付けた少子化対策では、裏付けとなる財源論で、具体策の提示を先送りした。
これでは政策の妥当性を見極めようがない。東日本大震災の復興増税分を防衛向けに転用する手法に対し、被災地から「復興と何の関わりがあるのか、全く分からない」といった批判が噴出したのは当然だろう。
少子化対策の財源については、共同通信社の世論調査で7割を超える人が、首相の説明に「納得できない」としている。
政権は、財源論を曖昧にし、国会での議論を深めさせなかったことへの責任を感じるべきだ。
性的少数者への理解増進を目的とするLGBT理解増進法や、難民申請中の強制送還停止回数を制限する改正入管難民法は、当事者らから強い反発が出ている中、急ぎ足で成立した。
法成立でかえって人権侵害が懸念されるとの指摘もあり、もっと丁寧な論議が必要だった。
論戦に物足りなさが残ったのは、岸田首相が終盤に解散風をあおったことと無関係ではない。
衆院の解散・総選挙が意識され過ぎたことで、会期を延長して審議を尽くすという流れにならなかったことは残念だ。
責任は野党にもある。立憲民主党と、日本維新の会、国民民主党がけん制し合い、連携して与党を追及する動きが乏し過ぎた。
審議の深まりを欠いたまま、次々と歴史的な大転換が図られていく現在の国会のありようには、憂慮の念を禁じ得ない。
国民の代表である国会は、議論を徹底することで、国民の負託に応えてもらいたい。













