財政、金融分野での協力が再び動き出し、日韓両国は関係正常化へさらに前進した。懸案はなお残るが、両政府は融和の流れを断ち切ることなく、真の友好国となる努力を続けてもらいたい。
鈴木俊一財務相と韓国の秋慶鎬(チュギョンホ)・経済副首相兼企画財政相が都内で「日韓財務対話」を開き、関係悪化に伴い2015年に終了した通貨交換(スワップ)協定を8年ぶりに再開することで合意した。
再開により、日韓どちらかの国が金融危機に見舞われた場合、その国の通貨と引き換えに、もう一方の国が100億ドル(約1兆4千億円)を上限に融通できる。
米欧の急速な利上げを背景に世界経済の減速感が強まる中、金融不安に伴う資本流出や通貨の下落に備えることが狙いだ。
鈴木氏は「円と(韓国通貨の)ウォンの信認にプラスに働く」と述べた。秋氏は「韓日両国の金融、経済協力を強固にする象徴だ」と強調した。
1997年のアジア通貨危機に韓国が巻き込まれた教訓から、協定は2001年に結ばれた。しかし、李明博(イミョンバク)大統領(当時)が島根県の竹島に上陸したことなどに日本政府が反発し、15年に期限切れで失効していた。
世界銀行によると韓国の外貨準備高は22年、4233億ドル(約61兆円)に上り、通貨危機時の約20倍になっている。日本は1兆2275億ドルとさらに大きい。
最近の円安もあって、協定は実益よりも、両国関係の回復という象徴的な意味合いが強いとの見方もある。投資家心理へ好影響を及ぼすことだろう。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が元徴用工訴訟問題を巡り、日本企業の賠償支払いを韓国財団が肩代わりする解決策を示して以来、戦後最悪とまで言われた日韓関係は、改善へと大きく動き出している。
3月には岸田文雄首相と尹大統領が会談し、関係正常化で合意した。11年以上途絶えていた両首脳のシャトル外交も再開された。
韓国大統領府が通貨交換再開を「3月の首脳会談後、安全保障、産業分野で速い速度で回復した両国関係が金融分野でも回復したことを示す、意味ある進展だ」と評価したのも理解できる。
これに先立ち、日本政府は輸出手続き上優遇する「グループA(旧ホワイト国)」に韓国を再指定するための政令改正を閣議決定した。21日に施行される。
韓国側が先行して日本を優遇対象国に戻している。19年から続いていた日韓の輸出規制の強化措置は全て解除され、貿易の不確実性が解消に向かうと期待される。
両国間には、東京電力福島第1原発の処理水放出や竹島の領有権を巡る問題などもあるが、正常化へ大きく踏み出した関係を強固にするには、企業が連携を深め交易を重ねていく必要があるだろう。
