
人前で話をするのが子どもの頃から苦手だった。友人や家族、同僚と対面で話しているときと異なり、大勢の人を前にすると、上がって頭が真っ白になる。
さながら、容量の大きいデータをダウンロードしようとして、動きが鈍くなるパソコンのよう。口を開きたいのに、すぐには言葉が出てこない。「また失敗した」と思うと、余計に焦って口が渇き、汗も噴き出す。口から出る言葉もしどろもどろになってしまう。
上がり症を自覚し、何とか大勢の前でスピーチすることを回避したい。そう願うものの、ありがたいことなのだが「キャリア教育で、記者の仕事について話してほしい」と依頼されたり、社内会議で企画趣旨を説明したりと、完全には避けられ...
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