3月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外への旅行の制約を受けました。その代わり、多くの国民は近場の自然を楽しんできました。
私もこの間、地元にある運河の遊歩道をよく散策しました。遊歩道は、車は通れません。静かで、時折カモやガンの親子を水辺で見かけ、和やかな気分になりました。
この運河は18世紀の産業革命の時代に、原料や工業製品を内陸部から効率的に運ぶために造られました。
当時、ガラス工業で栄えていた私の町や、その近くにある世界初の鉄橋で知られるアイアンブリッジをはじめ、産業の重要な地域に運河が整備されました。
また、当時の運河のトンネルや閘門(こうもん)(水量を調節して水面を一定にするためのせき)のサイズを考慮し、幅2メートル、長さ約20メートルのナロウボート(狭いボート)という木造貨物輸送船が活躍しました。
その後、鉄道が開通してから運河による水運は衰退したそうです。しかし、今も現存している運河は非政府組織によって維持管理されています。
かつてのナロウボートは今、グレードアップされています。大きさは当時のままですが、鉄製でディーゼル発動機を装備しています。
ボートの中は台所、トイレ、冷蔵庫などが備え付けられ、余暇や週末の住居用として利用されています。この夏休みにはナロウボートに乗って運河の「散策」を楽しむ家族連れをたくさん見ました。

産業革命から数えて250年の歴史がある運河とナロウボートの「恩恵」に預かって、現代人がストレスの多い新型ウイルス禍の中でもゆったりした時間を過ごしている。
なんだか、不思議な巡り合わせのような気がします。
大橋 久美子さん(長岡市出身)
(大橋さんは1960年生まれ。日本と英国でシュタイナー教育セラピストとして働きました。現在は英国人の夫や、幼児期を新潟県で過ごした2人の息子と暮らす主婦です)