私が住むサンパウロで新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのは、ちょうどリオのカーニバルが終わった2月でした。
あいさつの抱擁も、頰へのキスも濃厚で、何かと友人や家族と集まるのが好きなブラジルでは、ウイルス禍にあっても社会的距離をとる人はごく一部。もともと使う習慣のないマスクも義務付けになる前は、早めにマスクを使ったほうが逆に感染者ではないかと目立ってしまう始末でした。
独自に緊急事態宣言を出したのはサンパウロでした。まず学校を休校にし、病院や薬局、スーパー、ガソリンスタンドなどの生活必需品を扱う店以外の商業活動を規制し、公園も閉鎖。市民には必要時以外の外出自粛令が出されました。
貧困層対象の無料公的医療機関の崩壊に備え、サッカースタジアムや公園に大規模な野外病院を設営し、最悪の事態に備えました。
企業も可能な分野でテレワークに切り替え、病院もいち早くオンライン診療を取り入れるなどの対応が取られました。わが家も家族全員在宅勤務となり、買い物はデリバリーを頼るという人生初の巣ごもり生活です。
住んでいるマンションも緊急事態宣言が出される前から敷地内の公園やプール、ジムなどの施設を閉鎖。マスク使用や消毒を呼び掛け、エレベーターの使用も同一家族以外の同乗を禁じるなど独自の対策が取られました。
同時に、外出できない住民のためにエクササイズやピラティスなどのオンライン教室を毎日提供するなど、自粛ストレス解消への工夫も始まりました。
ただ、自粛策には課題もあります。地域によって貧富の差にばらつきがあり、居住環境の差が大きいのです。それがそのまま感染率や死亡率にも反映されているのが現状です。
どうか一日も早く終息しますように。サンパウロの空に願う毎日です。

自宅ベランダから撮ったサンパウロ市内の様子。新型ウイルス感染の一日も早い終息が待たれる
佐々木 暁子さん(新潟市秋葉区出身)
(佐々木さんは1971年生まれ。在名古屋ブラジル総領事館勤務を経て、現在はサンパウロで日本語を教えています)