パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルスは、ブラジルでも広がっている。3月初旬から広がり始め、医療体制の整っていないアマゾン地域や北東地域の被害も目立ち始めている。

 最も感染者が多いサンパウロ州が3月24日~4月7日を「quarentena(クアレンテーナ)」とし、不要不急の商業活動を規制する政令を出した。

 だが、効果は出なかった。この政令はサンパウロ州内全てのレストラン、喫茶店、バー、ナイトクラブ、理美容室などが強制的に休業(デリバリーサービスは規制対象外)、公園や美術館、博物館なども閉鎖する大規模なものだった。

 この政策が功を奏しないのは、人々の移動自粛率が45%から50%と低いからだ。国民性なのだろう、陽気で朗らかなブラジル人は「巣ごもり」は得意でなく、何かあると集まりたがる性格が災いしている。

 最近は自粛疲れもあって、外出者が増えていることも影響している。加えて、経済が停滞したため失業者が日雇いの仕事を求めて出歩かざるを得ないことも感染に拍車をかけている。

 サンパウロ市では感染を防ぐため早い段階からマスク着用を推奨したが、ブラジル人はマスクを使う習慣がなかったことと、中国人が祖国の親戚にマスクを送ろうと買い占めが起こったため、マスク姿の人を見かけることはなかった。

 その後、家庭でマスクを作ったり、仕事のなくなった縫製工場で手作りマスクを生産したりするなどで数多く出回るようになった。サンパウロ市が5月に入って外出時のマスク着用を義務付けたために誰もが色とりどりのマスクで外出している。

サンパウロでは、さまざまなマスクを見かけるようになった


 また、家の中で靴を履いていたブラジル人も、玄関で靴を脱ぎ上履きで生活し始めている。このためげた箱の需要が高く、1カ月以上待たなければ購入できない。

 マンションなどでは玄関ドアの外側に家族の靴が並べて置かれている。ブラジルの生活様式が変わろうとしている。


鈴木 雅夫さん(ジャーナリスト)
 (鈴木さんは母が三条市出身です)