
食品や生活用品などあらゆる分野で値上げが続き、物価高を伝えるニュースも多い。私自身で考えると、定食屋では頼むメニューのグレードを抑えるようになった気がする。財布のひもは固くなった。
使えるお金に上限がある以上、仕方ない。そう考えていたが、自宅の食卓で市販品の黒コショウが目に入り、ふと、こんな考えが浮かんだ。「今は数百円で買えるけれど、何百年も前は、このコショウだって高級品だったんだよな」
現在のようなグローバルな貿易システムがなかった昔、中世の欧州ではインドなどで採れるコショウは貴重な高級品。庶民には高根の花で、金銀とも交換されたという。
そう考えると、歴史の中では、昔は気軽に味わえなかった“高級品”が、今は身近に楽しめるようになったといえるかも。
現在、スーパーに行けば1キロ200円ほどで買える白砂糖は、江戸時代には1キロ1万円だったとされる。もちろん、時代が違えば購買力などあらゆる面が異なり、単純な比較はできない。ただ、50分の1と考えるとお得な気分になるのも事実だ。
時代と共に移ろうモノの価値。黒コショウやコーヒー、砂糖や氷…。かつて高級品といわれた食材を使った飲食店などを巡り、歴史と一緒に学んでみた。
苦しい物価高の今だからこそ、見方を変えて、「お大尽気分」を味わってみませんか。...
残り3026文字(全文:3578文字)