
10月9日から14日まで、東京の「Pinpoint Gallery」(渋谷区神宮前)で「おむすび舎と作家展」が開催された。おむすび舎は2016年に新潟県燕市で設立された絵本の出版社だ。「絵本はこころのごはんです」をキャッチフレーズに、食に関する絵本を刊行してきた。
絵本を中心とした展示を開催している「Pinpoint Gallery」では、作家の個展が主で、出版社に焦点を当てた展示は珍しいという。「食べることの大切さというメッセージが明確で、応援したいと思いました」と、学芸員のさいすさおりさん(40)は企画の意図を明かす。
会場にはおむすび舎がこれまで刊行した5冊の絵本とその原画、作家の食にまつわる絵も展示した。おむすび舎の絵本や作家のファンが多く訪れ、作品に見入っていた。

会期中には毎日、イベントが開催された。初日には、最初に刊行した『いのちのたべもの』(加藤休ミ/絵)の文章を担当した絵本作家の中川ひろたかさん(69)と、おむすび舎社主の霜鳥英梨(えり)さんのトークが行われた。

「何も知らないままに出版社を始めたんです」と霜鳥さん。食育について伝えたいことがあった霜鳥さんが、中川さんに相談したところ、「絵本にしたら?」と提案されたという。二人の間で何回もやりとりを重ねて、文章が完成した。
他の出版社に持ち込むつもりだったが、内容を変えられたくないなどと思い、自身で出版社を設立することを決意。中川さんも「出版社を作ったら、いろんな人に会えるよ」と後押しした。
「食の絵本」にこだわるおむすび舎の挑戦と、それを応援する人たちを追った。...
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