私が住んでいたバイーア州サルバドールは、さまざまな人々が暮らしています。

 中でもアフリカ系の割合が特に大きい地域として知られています。他にもヨーロッパ系や先住民のインディオ、アジア系もいます。

サルバドールの街並み。さまざなまな人々が共存している=5月

 このように多くの人種・民族が共存しようとすると、避けて通れないのが人種差別の問題です。友人たちと話しても、ブラジルでは人種の問題が絡むケースがあります。

 私自身の経験でも、身体的特徴をからかったジェスチャーをしたり、アジア系の言語をばかにしたような言葉を浴びせられたりすることがよくあります。

 しかし、多くのブラジル人は「これは人種差別(Racismo)ではない」と言います。

 彼らのいうRacismoは構造的なもので、奴隷制や虐殺の歴史から今まで続く社会的不平等を指します。ブラジルでは有色人種の多くの人々がいまだに社会的、経済的にはいあがれず、貧困が次の世代に続くという悪循環から抜け出せずにいます。

 では、アジアから来た私や外国人観光客に対する言動は何なのでしょうか。彼らは「それはRacismoではなくXenofobiaだ」と言います。辞書を引くと「外国嫌い」と訳されています。嫌いというわけではないと思うので、100%この訳に頼ることはできませんが、つまりは無知と思いやりのなさです。

 他国に比べ、日本は外国人に対して閉鎖的なようです。労働力不足や年金問題などを考えると、これからの日本はより開けていくのではないでしょうか。

 そうなった時、外国人との共生の経験がない私たちは、人種問題の現実をしっかり知る必要があります。

 ブラジルでは「外国人への偏見が強い国」「保守的な国」と捉えられている日本。来年には東京五輪・パラリンピックもあります。これから少しずつ世界の一員としての自覚を養っていきたいものです。


伊与部 洋樹さん(新潟市秋葉区出身)

 (伊与部さんは1997年生まれ。新潟南高校を卒業後、東京外国語大学に入り、夏までブラジルに留学していました)