
2024年7月、紙幣のデザインが20年ぶりに一新される。紙幣を見るときは、肖像画や偽造防止技術に目が行きがちだが、他にも随所に凝った意匠が施されている。現在の野口英世肖像の1000円札は、裏面に富士山と湖が描かれているが、これは新潟県十日町市出身の写真家・岡田紅陽(こうよう)(1895〜1972、本名・岡田賢治郎)の作品をベースにしたものだ。紅陽の作品はこれまでに、紙幣の他、多くの記念切手にも採用されている。新札への移行が近づくこの機に、生涯でおよそ38万点の富士山写真を撮影したという紅陽の人生をひもといてみたい。
和田明子(ライター、デザイナー)
ファインダーの向こうに見いだした「わがいのちの根幹」
「フジヤマ」の美、世界へ発信
岡田賢治郎は、...
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