桜のピンクに、レンギョウや水仙の黄色、まだたどたどしいウグイスの声。水平線を一望し、峠を走り、春の空気を吸い込む。今月7日に新潟市西蒲区で開かれた角田山一周ハーフマラソンで、贅沢(ぜいたく)な春を味わった

▼何よりうれしいのは集落ごとに響く住民の声援だ。制限時間を存分に使ってゆっくり走っていても、赤ん坊を抱っこした若夫婦やいすに座った高齢者が手を振り、励ましてくれた

▼3月下旬の新潟ハーフマラソンでも同じように応援してくれる人に出会った。冷たい雨の中でも、沿道から声をかけてくれる。その姿に心が温まる。力の限り前進すると、雨にかすむゴールのビッグスワンが大きな王冠に見えた

▼新潟市の観光名所はどこかと聞かれても、にわかに思い浮かばないことがある。しかしゆっくり地域を巡ると、思わぬ絶景を見つけたり、暮らす人のぬくもりを感じたりする。そんな景色に気付くことこそが、観光の醍醐味(だいごみ)かもしれない

▼あす21日に佐渡市で号砲が鳴る佐渡トキマラソンは今年で第15回を数える。10月に開かれる新潟市の新潟シティマラソンと初めて協力し、両大会を通じて誘客を図るという。ほかのマラソンでも、全国から訪れるランナーやその家族に、大会期間に限らず県内各地を巡ってもらう仕掛けができたら面白い

▼観光と健康は、ひらがなで書けば一字違い。どこか親和性がありそうだ。本県は海あり山あり、街あり里あり。運動と観光を組み合わせた「ヘルスツーリズム」にも適地だろう。

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