マイカー社会の本県でも、通勤や通学に公共交通を利用する人は多い。ラッシュ時は座席を確保するのも一苦労する。インターネットで検索すると、満員の車両で座るコツがいくつも紹介されている

▼基本中の基本は、間もなく席を立ちそうな人を探すことのようだ。手にしていたスマートフォンや本をしまう。窓の外をきょろきょろ眺める。こうしたしぐさをする人は近々降車する確率が高い

▼高校の制服や校章などから降りる駅を予測することもできる。いずれも周囲をよく観察することが大切だという。日常の一コマでも、仕事をする上でも、しっかりした観察眼は己を助けてくれる

▼だが、こうした観察眼を悪用する不心得者もいる。郵便受けに封書やチラシがたまっていたり、庭の雑草が伸び放題になっていたりする。そんな家には普段人の出入りがないと分かる。このような空き家に置かれたままの金品を狙った窃盗が県内で相次いでいる

▼県警によると、昨年の認知件数は197件と前年の23件から急増した。住人が亡くなり、貴重品や家財の処分が済んでいない家などが狙われるのだろう。所有者が離れた場所に住んでいて、なかなか管理が行き届かない家もある

▼満員電車の座席確保策を解説するサイトの一つは、腰を上げたかと思うと座り直す乗客がいて、降りる人の特定に失敗したケースも紹介していた。ちょっとした目くらましに遭ったようだ。空き家も、管理を業者に依頼するなどして不心得者の目をくらませたい。

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