書家としては異端と自認する。長岡市の鰐渕碧桃さん(56)は小学1年生の時に近所の習字教室に通い始めたが、小中学校では水泳部、高校では弓道部に所属。短大は家政科に進んだ
▼卒業後は、栄養士として働いた後、家庭教師、学習塾の講師を経験した。スリランカや英国へ自分探しの旅に出かけたこともあった。新潟日報文学賞の詩部門で2回、最終選考に残ったことがある
▼自宅で書道教室を開いたのは15年ほど前。同じ教室で小中学生に数学と理科、英語も教えている。プライベートでは小4と小2、年長組の男の子の子育て中。筆を握れるのは、家事や育児の合間と、3人を寝かしつけてからだ
▼今月から本紙窓欄の題字を担当する。題字は来年3月まで、毎月1日に新しい書体に変わる予定だ。モットーは「かっこよく書くこと」という。今月の題字では「ぽかぽかして、ふんわりした感じ」を出すのに1カ月をかけた
▼来月以降は「楷書や行書、隷書、篆書(てんしょ)と変化をつけて、季節感を出していきたい」と抱負を語る。素人には四つの書体の違いはよく分からないけれど、いろいろな窓に出合えそうだ
▼パソコンを使って文章を書くのが一般的になって久しい。一定のフォントで「窓」と表示しようとすれば、誰が打ち込んでも同じ「窓」になる。「書は人なり」という。一点一画には作者の人柄が表れる。異端の書家が筆と紙によって白と黒の世界を作り上げる。その過程を思い描くのも、窓欄を開く楽しみの一つになりそうだ。