ことしも拙宅のモッコウバラが咲いた。小さく黄色い花が愛らしい。房状に花をつける姿は、妖精が身を寄せ合っているようだ。普段は殺風景な庭が、この季節ばかりは心躍る景色になる

▼バラの原種の一つとされるが、とげはない。園芸品種のバラの多くはあでやかな衣装をまとう一方、どこか近づきがたい雰囲気もある貴婦人に例えられる。これに対しモッコウバラは親しみやすく、素朴な美しさで周囲を照らす

▼秋篠宮ご夫妻の長女である小室眞子さんの「お印」だったことでも知られる。その結婚問題で「皇室バッシング」が過激化したことは記憶に新しい。共同通信社が先日実施した世論調査で、皇族の人格が侵害されていると考える人が8割を超えた

▼宮内庁はこの問題を機に、正確な情報を発信する広報機能を強化した。インターネット上にあらゆる情報が飛び交う現代では不可欠な取り組みだ。戦前の不可侵な存在から戦後は国民統合の象徴に変化したように、皇室のあり方も時代や国民の考えに対応していくことが求められるのだろう

▼前述の世論調査では、女性天皇を容認する人が9割に上った。背景にあるのは皇位継承への危機感である。それは、多くの国民が天皇制の存続を望んでいることの表れだと言い換えることもできよう

▼今後の皇室がどうあるべきなのか。近づきがたい存在ではなく、親しみやすい姿が求められているのは間違いない。かわいげな花をつけたモッコウバラが教えてくれているような気がした。

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