その詩はこんなフレーズで始まる。〈私は決めた。ちゃんとした選挙で選んだ代表の人たちで 国会を作り その代表の人たちを通して 私が行動することを。〉。内容はどこかで聞いたことがあるような…。日本国憲法の前文である

▼詩人の白井明大(あけひろ)さんが〈日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…〉という冒頭部分を詩の形にした。著書「日本の憲法 最初の話」では、憲法や労働基準法などの条文を大胆に詩訳している

▼婚姻について定めた憲法24条は〈両性の合意のみに基づいて成立し…〉と定める。この規定を白井さん流に詩訳すると、こうなる。〈私は あなたと あなたは 私と 「結婚します」という お互いの合意 のみが 結婚成立の唯一の条件〉

▼同性同士の結婚を認めない民法などの規定が憲法違反かどうか問われた裁判では、違憲や違憲状態とする判決が相次いでいる。国側は24条について「両性は男女を示す」と同性婚を認めていないが、3月の札幌高裁判決では「同性間の婚姻も異性間の場合と同じ程度に保障していると理解できる」との判断が示された

▼白井さんの詩訳も〈私〉と〈あなた〉で構成されており、異性婚であれ同性婚であれ、大切なのは2人の意思だけなのだと平易な言葉で訴えている

▼憲法の条文は硬質で読むのに苦労することもある。詩の形であれば、多くの人が理解する手がかりになる。憲法がうたう精神を改めて感じてみたい。きょうはそういう日である。

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